HARUNA(SCANDAL)にとっての至福なオフ

ミュージシャンの「オン」と「オフ」を覗く連載「至福なオフ」。「オン」のモードで作り上げた作品についてはもちろん、休日の過ごし方や私服のこだわり、聴いている音楽など「オフ」の話題にも触れています。
今回のゲストは、日本を代表するガールズバンド「SCANDAL」のボーカル&ギター・HARUNAさんです。2021年に結成15周年を迎えたSCANDAL。9月29日には、今のSCANDALを表現した新曲『one more time』をリリース。オフの日のファッションや聴いている音楽だけでなく、HARUNAさんの「至福のオフ」が活かされた「オン」の楽曲制作についてたっぷりお聞きしました。15周年を迎えた今だからこそ見ることのできる、ありのままのHARUNAさんをお届けします。
オフの日のファッションは?
ーー髪色変わりましたよね? とてもお似合いです。
HARUNA:ありがとうございます。新曲の雰囲気に合わせて、初めて青にしてみました。
ーー今日の私服コーディネートはセットアップですか?
HARUNA:実は違うんですよ。秋用に羽織れるものがほしいと最近買ったジャケットと、同系色のパンツを持っていたので、セットアップ風にしてみました(笑)。背が低くて華奢なので、かなりバランスを考えて着こなすようにしています。今日はジャケットがダボッとしているから、ボトムはタイトなものを選びました。上がタイトな時は、下をダボッとさせています。
ーー身長を気にされるということは、靴にもこだわりが?
HARUNA:厚底を履きがちですね。今日は白のヒールブーツを履いてきました。ライブのリハーサルとかカッチリ決めなくてもいいような現場だと、インヒールのスニーカーやダッドシューズのようなボリュームのある靴を履きます。
ーートータルのシルエットをかなり意識されているんですね。
HARUNA:何も考えずに服を選ぶと子どもっぽく見えてしまいそうだなと、バランスは気にしています。髪を切ったのも身長を気にしていたからなんですよ。短い方がトータルのバランスがいい感じに見えるような気がして。でも最近また伸ばしたくなってきたので、絶賛伸ばし中です(笑)。
ーーずっと同じ長さにしていると飽きてくるの分かります(笑)。続いて、今日のファッションのポイントを教えてください!
HARUNA:今日着ているレースのシャツはポイントです。普段から透け感のある服を着ることが多くて。
ーー指輪もすごくかわいい。1つの指輪で2つ付けているように見えるデザインが面白いですね。
HARUNA:これは誕生日に親友たちにもらいました。普段そこまでアクセサリーを付けないのですが、気分で付ける時は存在感のあるもののを付けています。石が好きなので、石モチーフのアクセサリーばかり選びがちです。それを理解している友だちが贈ってくれたターコイズの指輪を今日は付けてきました。
ーー服やアクセサリーでお気に入りのブランドはありますか?
HARUNA:最近はあまりブランドを意識していないかも。一着一着にお金をかけるのではなく、そこそこ安くて長く使えるコスパの良いものを選ぶ方向になってきました。ちなみに今日着ている服は「ZARA」です。
ーー休日などの完全にオフの日はどういう服装が多いのでしょう。
HATUNA:完全オフの日やリハーサルだけの時は、パーカーとかカジュアルな服が多いですね。こういうインタビューや撮影のあるお仕事と、それ以外のお仕事、TPOに合わせて服を選んでいます。
オフの日、なにしてる?
ーー最近、オフの日は何をして過ごしていますか?
HARUNA:ひたすらK-POPグループの「推し活」「推し事」をしています。ここ1年くらいでどっぷりK-POPの沼に浸かってしまって……。推しの音楽を聴いたり、ライブ映像やバラエティ番組を観たり、おうちに友だちを呼んで鑑賞会をすることもあります。
ーーK-POPグループにハマったのには何かキッカケが?
HARUNA:10年くらい前にもK-POPグループにハマっていた時期があったので、K-POPにハマる素質はもともとあったのですが(笑)。コロナ禍前くらいからじわじわと「BTS」が気になり出したのと、加えて「Nizi Project(以下、虹プロ)」を観始めたんですよ。虹プロの中で使用されていた「TWICE」や「ITZY」などの曲からK-POPいいな!と思い、いろいろ聴いたり見たりし始めて。さらにそのタイミングで、私が以前K-POPにハマっていたことを知っている友だちから追い打ちをかけるように「最近BTSにハマったんだけど、好きじゃない?」と連絡が来るという(笑)。それで勉強し始めたら、沼でした(笑)。
ーーいろいろなタイミングが上手く重なったわけですね(笑)。特にお好きなグループはいますか?
HARUNA:K-POPにハマったキッカケの1つである「BTS」はもちろんなのですが……推しがいっぱいいて。今は「BTS」「ENHYPEN」「NCT」「TOMORROW X TOGETHER」のファンクラブに入会しています(笑)。
今、特に推しているのは「NCT」の派生ユニットである「WayV」です。「WayV」は中国出身メンバーが多く集まっていて、曲のほとんどが中国語、いわゆるC-POPと呼ばれるジャンルなんです。いろんなK-POPグループに触れると新しいジャンルに出会えるので楽しくて。
ーーそんなに推しが多いと「推し活」大変ですよね……。
HARUNA:大変ですよ! 毎日誰かしらから供給があるって、それで生きているようなものです(笑)。オフの日関係なく推さないと時間が足りない。今このインタビューを受けている瞬間もメルマガが届いていたりしますもん。
ーーバンドメンバーのみなさんもHARUNAさんがK-POPにハマっているのはご存知なんですか?
HARUNA:それこそMAMI(ギター&ボーカル)も同時期にK-POPへハマったので、しょっちゅう情報交換をしています。MAMIもファンクラブに入っていて、私とは違うグループを推していることもあるから、いろいろ布教してもらっています(笑)。
オフの日に聴きたい音楽は?
ーーHARUNAさんにリストアップしていただいた「オフの日に聴きたい音楽」も見事にK-POPばかりで(笑)。
HARUNA:いろいろなジャンルの曲を選んだ方がいいかなと思いつつ、休日に聴いている音楽をとにかく素直にピックアップしました。今の自分を表すとなるとK-POPしかない!と。好きが全開ですみません(笑)。
ーーガールクラッシュの代表格である「MAMAMOO」をリストに挙げていたのが個人的にすごく納得したと言いますか……。「MAMAMOO」のルッキズムに抗う「この時代の美しさの基準に私が合わないのなら、私が違う基準になるんだ」というコンセプトを含め、SCANDALに通ずる部分があるのではと感じました。
HARUNA:それを意識して「MAMAMOO」を見ていたわけではないですけどね。単純にカッコいいなと思うし、メイクも衣装もめちゃくちゃ素敵だなと思っていました。ただ、その価値観は自分たちにも通ずるかもしれません。誰かの目線を気にした表現をするのではなく、自分たちが好きなこと・楽しめることを素直に真っすぐ表現した方が気持ちも届くのではないか。私たち一人ひとりの持つ個性、人間らしさを大事にして生きていきたい。そういうことを最近自覚したので、楽曲やアートワーク、メイクや衣装にも取り入れるようにしていて。だから「MAMAMOO」の考え方にはすごく共感します。
ーー最近自覚したのには何かキッカケがあったのでしょうか?
HARUNA:デビュー当時の印象が拭えないまま活動をしてきたことで、もう30代なのに30代としての見られ方をされていないと感じる瞬間があって。どうしても「制服を着て」「黒髪ロングで」というイメージが先行してしまう。だから、いくら等身大の自分たちの音楽をつくっても、根付いたイメージの影響で伝えたいことが届ききれていないと感じていました。なぜイメージが拭えないのだろうと考えた時、プライベートを見せないようにしていたことが1つ理由としてあるんじゃないかって。それまで、つらいこと・楽しいことなど思っていることや感じていることを発信しない良さを感じていたんですよ。みんなと同じように年相応に感じること・思うことはあっても、日常からその側面を見せていないといくら歌詞に込めたところで届かないよなぁと感じるようになってきて。
2020年にリリースしたアルバム『Kiss from the darkness』くらいから、自分たちを言葉で表現して発信するようになりました。みんなと同じように傷ついたり、寂しくなったり、悲しくなったり、喜んだり、楽しんだりするんだよって。「みんなと同じ人間なんだ」と分かってもらいたい意識で今はいろんなことに取り組んでいます。
ーーTwitterで推しのお話をされているのは、「人間らしさ」を見せる目的も?
HARUNA:それはあるかも。推しの話って超プライベートなことだけど、推しを好きな自分を含めて今の自分だから。「人間らしさを見せなきゃ!」と無理に発信しているわけではないけど、推しについて話したくなったら我慢せず話すようにしよう!と思っています。そうやって発信することで「同じアーティストが好きです」「推し(HARUNA)が推し(K-POPグループ)を好きなのが嬉しい」とか言ってくれるファンもいて。好きを発信したら身近に感じてもらえるようになったと思うと嬉しいですね。
ーー推しと共通の趣味があるのはファン心理として嬉しいと思います。では、今回のプレイリストの中で特に聴いている曲を教えてください!
HARUNA:BTSの『Permission to Dance』です。今年の7月にリリースしたシングルアルバム『Butter』に収録された楽曲なのですが、この曲にはすごく救われましたね。
ーー救われた?
HARUNA:コロナ禍になってから音楽の中に誰かが傷ついたり不安に感じたりする言葉を使わないようにしないととナイーブになる部分があって。適切な言葉選びをしながら、それでも明るい気持ちになれる・心救われる楽曲をつくろうと制作をしていました。ただ、やっぱり音楽くらいは楽しくしていたいし、わざわざ自分たちで音楽に蓋をしなくていいんじゃないかと思うようになってきて。そんなポジティブなマインドを入れたいよねと制作したのが新曲の『one more time』でした。
ちょうど『one more time』の制作期間中に『Permission to Dance』のMVが公開されたんですよ。MVの中にはマスクを外したりハグしたり音楽にノッて楽しく踊ったりしている様子が映っていて、別の世界線を見ているような感覚に陥ったのと同時に「やっぱり音楽くらいは楽しくてもいいんだ!」と救われました。自分たちのつくっていた曲は間違っていないという気持ちにさせてくれた一曲です。
SCANDALの二面性を表現した新曲『one more time』
ーーK-POPを好きになったことで、SCANDALの音楽に反映されている部分もあるのでしょうか?
HARUNA:まさに『one more time』はK-POPから物凄く影響を受けています。K-POPにハマっているMAMIが作曲を担当したので、インスピレーションを受けていますね。自分たちの楽器だけじゃなく、いろんな音が入っている楽しさを感じています。
出典元:YouTube(SCANDAL)
いつもお世話になっているサウンドエンジニアさんが、K-POPアーティストの日本語楽曲のレコーディングによく立ち会われている方なので、『one more time』はK-POPを意識したレコーディングをしています。普段はボーカルの声を最高でも2本までしか重ねないけど、今回は3本重ねて広がりを出しました。あとは声でリズム感を出す息遣いを取り入れてみたり。これまでとはかなり違うレコーディングに挑戦しています。
ーーカップリングの『one more time(PARTY ver.)』は同じ楽曲のアコースティックセットです。音が変わるだけで、こんなにも雰囲気が変わるとは。
HARUNA:今のSCANDALの二面性を『one more time』で表現しました。『one more time(PARTY ver.)』は逆に自分たちの楽器と声だけを使用しているので、同じ楽曲でもいろんな楽しみ方をしてもらえたらと。ちなみに今回は、自分たちですべてディレクションも担当しています。
ーーバンドとは異なるK-POPにのめり込んで、さらにその音楽をバンドの楽曲の中に吸収している。意外性があり、とても面白いです。
HARUNA:とはいえ、SCANDALとして活動をする前は10年近くダンスをやっていましたし、歌手になりたいと思ったキッカケも安室奈美恵さんやSPEEDなどの小室(哲哉)さん楽曲に憧れたからなので。踊ることが好きという気持ちが根底あるんだなと最近気づいた感覚です。今はSCANDALとしての自分も、オフの自分も大好きで。どちらの自分も認めて表現していけたらというフェーズに入ってきました。
ーー表現するのが楽になった感覚もありますか?
HARUNA:そうですね。自分たちでバンドをやろうとしたわけではなく、ダンスボーカルスクールの中で結成されたバンドだったから、長い期間いろんな葛藤もありました。バンドマンとしての意識が確立されるまでにも時間がかかったし、ダンスボーカルスクールで結成したからこその「自分たちの強み」をコンプレックスに感じる瞬間もあって。
でも今は、そんな過去も含めて全部好きだと言えるようになったし、そんな自分たちのことが今はすごく好き。だから自分たちを表現することがすごく楽になりました。
15周年を迎えたSCANDALが今思うこと
ーー2021年に結成15周年を迎えたSCANDALですが、HARUNAさんお話を聞いて「今後も自分たちらしい表現を追及していくぞ!」という気概をすごく感じました。
HARUNA:今までは「バンドとして」「SCANDALとして」認められるために一生懸命活動を続けてきて、その結果15年という長い期間続けられたし、ようやく自由にいろんなことへ挑戦できるようになったなと。これからは自分に正直に、本来の自分を隠さずに生きていこうと思っています。これからまた何年と活動を続いていった先でSCANDALはどうなっていくのか、自分たちもすごく気になるところです。
ーーここから20、30周年と経つ中でSCANDALがどう変化していくのか、すごく楽しみです。
HARUNA:私自身、すごく楽しみです。と言いつつ、今のところメンバーの一人も結婚・出産を経験していないので、そうなった時にまたどう変化していくのか予想できない部分もあります。特に子どもができたら活動の仕方をどうするか考える必要があるかもしれませんし。まあでも、結婚・出産を経験してすぐに音楽活動へ戻ってきた友だちのミュージシャンを見ると、音楽は続けていけそうだなとも思いますし、その時が来てから考えればいいかなとも(笑)。未来のことは分からないけど、新しいフェーズに突入するたびにいろいろ挑戦してきた自信はあるので、常にそういう自分たちであり続けたいなと思っています。