MANATO(BE:FIRST)を築き上げた音楽の原点
ダンス&ボーカルユニット「BE:FIRST」のメンバーMANATOは音楽を愛し、音楽に愛されている人だ。小学生高学年で音楽のレッスンを受け始め、小学校卒業後は音楽留学のため遥々ニューヨークへ。一度は挫折を経験するも諦めきれず再び音楽の道を歩き出し、ボーイズグループオーディション「THE FIRST」への参加を経た現在、BE:FIRSTの一員として人気アーティストの階段を駆け上がっているーー。
音楽と共に人生の歩みを進めてきたMANATOから、音楽のルーツや自身に影響を与えた楽曲、さらにBE:FIRSTデビュー後に変化した音楽への意識など、今の彼の“音楽観”を構成する源泉に迫った。また、2022年3月7日にデジタルリリースしたニューシングル『Bye-Good-Bye』に注ぎ込んだ思いもお届けする。
(写真:安藤未優)
MANATOを築き上げた音楽のルーツ
ーMANATOさんが音楽に目覚めたのはいつ頃ですか?
MANATO:自分から明確に音楽に興味を持ち始めたのは、レッスンを受け始めた時なので小学6年生の頃です。
ーレッスンを受け始めたのには何かキッカケが?
MANATO:当時『ONE PIECE』が好きで、アニメの主題歌だった東方神起さんの「Share The World」をずっと歌っていたみたいなんですよ(笑)。お風呂やトイレ、外にいる時……どこでも歌っているから「ちゃんとしたところで歌えば?」と両親がレッスンを勧めてきて。それがキッカケでレッスンを受け始めました。
ー音楽の道へ進むようになったのは自分からではなく、ご両親がキッカケだったんですね。
MANATO:はい、最初は自分から受けたいと言ったわけではなかったんですよね。レッスンを始めてから徐々に音楽へのやりがいを感じていきました。あと、これは最近思い出したのですが、ボーカルレッスンの体験入学的なやつで初めてちゃんと人前でボーカルを披露したんですよ。その時の課題曲が、まさかのAAAさんの「逢いたい理由」で! 当時はラップパートではなく歌パートの担当でしたけどね(笑)。それでも人前で歌う原点となったのがAAAさんの楽曲って、今となってはすごく運命だなと思います。
ーそれは本当に運命を感じますね……! その後、MANATOさんの音楽のルーツに影響を受けた経験はありますか?
MANATO:小学校卒業後にニューヨークへ留学した経験は自分の音楽面で一番刺激を受けました。音楽が文化の街で歌とダンスと英語を学ぶという趣旨の留学で、本場のストリートで歌ったり日本の音楽文化の違いを感じたり。
聴く音楽のジャンルもガラッと変わりました。僕がニューヨークに行った時代はちょうどHIP HOPやR&Bが主流になっていたし、周りにもそのジャンルの音楽好きがたくさんいて。いろんな曲を勧めてもらって、一緒に歌っていたから、より深くHIP HOPやR&Bを知ることができたんですよね。そういったことも含めて、今の自分の音楽に対する向き合い方を形成してくれたのは、やっぱりニューヨークでの経験が一番大きいかなと思います。
ー留学当時、特に聴いていたアーティストは?
MANATO:当時はクリス・ブラウンやジャスティン・ビーバーがすごく流行っていたので、そこら辺の曲はめちゃめちゃ聴いていましたね。あとは、アリアナ・グランデも。最近また、アリアナ・グランデの曲をすごく聴くようになって。
ーなぜ最近になってまた聴くように?
MANATO:自分が留学中によく聴いていた曲を今になって聴いてみることに最近ハマっていて。アリアナ・グランデの曲もある日ふと聴きたくなったんです(笑)。
ー中でもお気に入りの曲があったら教えてください!
MANATO:たくさんあるんですけど、「Problem」と「One Last Time」は最近聴きなおしてまたすごく好きになった曲です。留学中のダンスレッスンで踊っていたんですよね。
あとは、Jay-Zの「Empire State Of Mind」もめちゃめちゃ好き。タイトル通りニューヨークをモチーフにした楽曲なので、歌詞の中に「ヤンキース(ニューヨークを代表するベースボールチーム)」や「自由の女神」というワードが入っていて。ラップで「ここがニューヨークだ!」と言っている歌詞だから、あの時のことがフラッシュバックします。
ー当時の記憶や思い出が蘇ってくるんですね。
MANATO:本当にそうなんですよ。小学校卒業してすぐ、英語もほとんど学んでいない中で留学して、まっさらな状態だったからこそいろんなものがすごく吸収できた。「あの経験がなければ今の自分はなかったな」とか、「そんなすごい場所に自分はいたのか!」とか、曲を聴いてより思います。懐かしいというより、最近の言葉で例えるなら「エモいな」って感じですね(笑)。
最も影響を受けた楽曲とは?
ー留学中以外にも、MANATOさんが影響を受けたアーティストや楽曲はありますか?
MANATO:めっちゃあります! 「これまで聴いてきた曲、全部!」と言いたいところですが、中でもiriさんの「Watashi」と「Corner」、SIRUPさんの「LOOP」は自分のルーツになっていますね。
ー今度はどちらも日本のアーティストですが、お二人ともR&Bシンガーということもあり納得です。
MANATO:そこら辺が好きなのがバレますよね(笑)。お二人を知って好きになったのは、わりと遅くて。高校生くらいの時だったと思います。
ーそのタイミングで好きになったのには何か理由が?
MANATO:留学を経験して日本に帰ってきて、そのあともいろいろ挑戦してみたものの、結果に繋がらなかった時期があって。音楽の楽しさが分からなくなってしまったので、一度音楽から離れてみたんですよ。それまでは友達と遊ぶ時間も削って夢を優先してきたから、普通の学生として生活してみようと。
だけど、その生活をしてみたらすごく物足りない。心に穴がポッカリ空いた感じになって、「自分にとって音楽はやっぱり大切なんだ」と気づかされた時期に出会ったのがiriさんの「Watashi」と「Corner」、SIRUPさんの「LOOP」でした。自分の突き詰めたい方向性や目指す夢の方針が定まったのは、このお二人に出会えたおかげです。
ーそれぞれどんなところに惹かれたのか教えていただきたいです。まずはiriさんについて。
MANATO:ロウ成分の効いた歌声やレイド・バックした歌い方はもちろん好きなのですが、一番はトラックへの憑依の仕方。すべての楽曲制作にご自身が関わっていて、自身の持ち得る力を100%引き出す楽曲を生み出しているのはすごく憧れます。
ーでは、SIRUPさんについてはいかがでしょう?
MANATO:SIRUPさんは自分がクリエイトするという点で、すごく勉強になった方です。中でも「LOOP」には驚かされました。タイトルの通り同じコードがずっとループしている楽曲で。同じコードをループさせる楽曲って、トラックに何か要素を付け足すかメロディを変えるかしないと面白みが出ません。それなのに、SIRUPさんの「LOOP」は飽きずにゆったり落ち着いてノレる不思議さがあったんですよ。楽曲自体がすごく好きで学校の帰り道によく聴いていましたし、作詞作曲をしていた時期でもあったので新しい発見にも繋がりました。
出典元:YouTube(SIRUP Official)
ーそれぞれ惹かれるポイントに違いはありますが、MANATOさんが音楽に触れる際、一貫して注目するポイントはありますか?
MANATO:以前は歌詞だったのですが、今は“ノリ”です。聴いていて心地よい楽曲でないと、ずっと聴いていられなくて。小学校6年生のレベル感ではありますけど(笑)、歌詞にグッとくるフレーズがある曲を基準に聴いていました。もちろん今でもJ-POPを聴いて歌詞いいなと思うのですが、ニューヨーク留学に行ってから聴く音楽の基準は大きく変わりましたね。
ーやっぱり留学の経験が大きいんですね。
MANATO:はい。ノリやグルーブ感、ラップならフロウとか。そこら辺をポイントに聴いています。サブスクで音楽を聴いていると自分の聴いている楽曲に関連づいた楽曲を紹介してくれるじゃないですか。永遠と好きなノリの曲が流れてくるので、ずっと聴き続けられるんですよね(笑)。
ー自分の好みの曲が流れてくるとずっと聴き続けられるの、すごく分かります(笑)。やっぱり音楽はサブスクで聴くことが多いですか?
MANATO:サブスクとYouTubeですかね。
ーYouTubeではMVを見るのでしょうか?
MANATO:結構見ますね。なんなら、MVがキッカケで好きになる曲もたくさんあります。例えば、iriさんの「Shade」はMVがキッカケで曲も好きになりました。
出典元:YouTube(iri)
MVはモデルの方が街を歩いたり食事をしたり普通の日常風景を映しているのですが、歌詞や曲の雰囲気と映像がとてもマッチしていたんですよ。映像という視覚情報で共感できる部分が多くて、すごく好きになった曲です。
「THE FIRST」、そしてBE:FIRSTデビュー後の変化
ーBE:FIRSTとしてデビューしてから、MANATOさんの音楽に対する変化はありましたか?
MANATO:もっといろんな音楽に触れようという気持ちになりましたね。「THE FIRST」の頃からクリエイティブ審査があったので、自分たちでクリエイティブする機会をいただいていて。僕自身、たくさんの音楽に触れた分だけ、歌詞もメロディも引き出しが増えると思っています。これまでも音楽が好きでたくさん触れてきたけど、より一層いろんな音楽に触れようって。
ーどんな音楽に触れるようになりましたか?
MANATO:一番影響を受けたのは、RYOKIくん・LEOくん・JUNONくんが好きなK-POPですね。有名なアーティストの名前だけは知っているレベルで、オススメされるまで全く聴いたことがなかったんですよ。なので、最近はBLACK PINKさんとか有名なK-POPアーティストの曲を聴いてハマり始めている段階です。中でも、RYOKIくんにオススメしてもらったNCTさんの楽曲をめちゃめちゃ聴いています。今一番ハマっているアーティストかもしれません。「Sticker」「Lemonade」「BOSS」…好きな曲がいっぱいあります(笑)。
出典元:YouTube(SMTOWN)
ー今、数多くのK-POPアーティストがいる中で、NCTに惹かれた理由が知りたいです。
MANATO:僕の中でのK-POPアーティストの最大の魅力は、“見せ方”だと思っています。高い技術・スキルがあった上で、それを最大限引き出す見せ方を育成しているのかなと。MVを見ていると、一人ひとり自分のアピールの仕方をしっかり理解している。自分のプロモーションが本当にお上手で。そんな中でも特にアプローチの仕方に惹かれたのがNCTさんだったんですよね。
ーそれに影響を受けて、「自分の見せ方を変化させよう」と考えることも?
MANATO:あります! K-POPアーティストは息交じりの歌い方、トラックにもたれかかるような歌い方をされる方が多くて。最近は無意識でそこに影響を受けているのか、ボイストレーナーのりょんりょん先生(佐藤涼子)に「あんた息多すぎ!」って言われました(笑)。そこで自然とK-POP愛が出ちゃっているのかなと(笑)。
ーははは(笑)。
MANATO:でも、続けて「一つの歌い方としてはすごくいいよ」と褒めてもいただけたんですよ。K-POPを聴いて、新しい歌い方を発見できて、自分の引き出しが増えた。その変化はすごくありがたいなと思っています。
ーMANATOさんの歌い方で今ハマっている音楽が分かるかもしれませんね。
MANATO:たしかに! バレちゃうかもしれないですね(笑)。
ーそういった影響も含めて、今のMANATOさんがBE:FIRSTでのクリエイティブ面で意識していることもぜひ教えてください。
MANATO:やっぱりノリや聴き心地、グルーブ感は意識しています。「THE FIRST」のクリエイティブ審査」で使用したMatt Cab & MATZさんのトラックをベースに、BE:FIRSTのメンバーで新たにメロディーと歌詞、ダンスを作り直した「Kick Start」という曲があるのですが、そこで僕はメロディの制作を担当させてもらったんですよ。
出典元:YouTube(BE:FIRST Official)
そこで、いいメロディが思いついたとしても「このトラックに合わない」と思ったら入れないようにしたり、自分が歌いたいメロディができたとしても「ほかのメンバーが歌った方が心地いいかも」という考え方ができるようになったり。自分のエゴを出すのではなく、客観的に見て何が一番トラックにハマるかを意識できるようになって。それはBE:FIRSTになってから変化したことですね。
ーグルーブ感のようにサウンド的な聴き心地だけではなく、声質的な聴き心地も意識するようになったと。
MANATO:そうですね。実際「Kick Start」はそれを意識した歌割りにしています。 たとえ僕が作ったメロディだとしても、「RYUHEIやSHUNTOが歌った方が味が出るかもしれない」と思ったらそれを取り入れていく感じ。誰がどのメロディを歌うかによってもイメージが全く異なるんですよ。それは音楽にしかない魅力だなと最近思うようになりました。
新曲『Bye-Good-Bye』は、例えるなら“ファイトソング”
出典元:YouTube(BE:FIRST Official)
ー3月7日にリリースしたニューシングル『Bye-Good-Bye』のお話も聞かせてください。タイトルのイメージからいい意味で裏切られるようなポジティブで優しいサウンド感に驚かされました。MANATOさんは本楽曲にどんな印象を持ちましたか?
MANATO:今年1月に行ったライブ「THE FIRST FINAL」で初めてパフォーマンスした時から思っていたことなのですが、「THE FIRST」で経験した出逢い・別れ・想い、すべて背負って前に突き進んでいかなきゃいけない、そんなメッセージが詰め込まれていると感じていました。オーディション中にSKY-HIさんが言った「こいつらが居たからオーディションに落ちても仕方ないやって思われるくらいのグループになろう」という言葉がすごく心に残っていて。僕たちBE:FIRSTのルーツには絶対的に「THE FIRST」の経験がある。それを忘れずに、みんなで抱いた「世界を取る」という大きな目標に僕らが責任を背負って、新しい一歩を踏み出さないといけない。そんな思いがこの楽曲にすごくリンクしているなと感じました。
タイトルにも“Good-Bye(=さようなら)”という言葉が入っていますが、生きていれば別れがあるのは当然で。だけど同時に出逢いや感謝があるから、別れに引きずられずに前へ進んでいける。なので、聴いてくださる方たちの背中を押してくれるような楽曲にもなっているのではないかと思います。
ーMANATOさんも最初に歌詞を見た時、「背中を押されているな」と感じましたか?
MANATO:めちゃめちゃ思いました。『Bye-Good-Bye』ってタイトルなのに、イメージと全然違ってすごくポジティブな気持ちになれるじゃん!って(笑)。例えるなら“ファイトソング”ですよね。頑張りたい時に聴いてもらいたい曲だなと思います。
ー3月って卒業式があったり、ある意味“別れの時期”でもあるじゃないですか。そのタイミングでのリリースもまた妙だなと思いました。
MANATO:いや、本当にそうなんですよ!だから、僕たちにとっての卒業式でもある「THE FIRST FINAL」という場所で最初にパフォーマンスができたのもすごく大きな意味があったと思っています。
ー月並みな言葉で恐縮ですが、曲の意味もタイミングもすべてにおいて“エモさ”を感じました……。それでは最後にリスナーのみなさんに向けて、MANATOさん的に注目してほしい歌詞やポイントなどがありましたらお聞かせください!
MANATO:全部注目してほしいのですが(笑)、一つ挙げるならフック終わりの歌詞「ありがとうと Bye Bye 涙ごと All my life 君を歌うよ」ですかね。この歌詞は僕たちの意識がすごく込められているのですが、聴いてくださる方もポジティブになれるフレーズだと思います。
また、僕たちがこれまでパフォーマンスしてきた「Brave Generation」はロック調、「Move On」は厳つくて、「Shining One」はポップな感じとさまざまなジャンルで、『Bye-Good-Bye』はまた一味違う楽曲になっています。今までのBE:FIRSTにはない新しい魅力が詰まっていて、音楽的にもメンバーの新しい一面を感じてもらえるかなと。そこも含めて注目して聴いてもらいたいです。