ニューアルバム『ファンキーモンキーベイビーズZ』とファンモン名曲応援ソング秘話

ニューアルバム『ファンキーモンキーベイビーズZ』とファンモン名曲応援ソング秘話
森朋之
森朋之

FUNKY MONKEY BΛBY'Sから、再始動後初のオリジナルアルバムが到着!
『ファンキーモンキーベイビーズZ』と名付けられた本作には、「エール」「ROUTE 16」「YOU」などのシングル曲のほか、ファンモンの“らしさ”と“新しさ”が込められた楽曲を収録。「手ごたえはめちゃくちゃあります。自信作ですね。」(ファンキー加藤)という本作について、ファンキー加藤、モン吉に聞いた。

またあわせてファンモンの真骨頂ともいえる“卒業ソング&応援ソング”を3曲ピックアップ。楽曲制作時のエピソード、そこに込めた思いなどについて改めて紹介していく。

ファンモンの名曲“卒業ソング&応援ソング”


♫ ありがとう (2013年)

大切な人への感謝をストレートに描いた21thシングル。ジャケット、MVに明石家さんまが出演。

出典元:YouTube(dreamusic)

ファンキー加藤:(2013年6月の)解散というものを踏まえて作った曲なんですが、どんな気持ちだったんだろうな……。(DJ)ケミカルの卒業はかなり前から決まっていたので、自分たちとしては“ゴール”だったんですよ。でも、ファンのみなさんはそうじゃなかったと思うし、僕自身もいろんな感情が巡ってましたね。「ありがとう」は“こうすればもっと聴かれるかな”みたいなことは一切考えず、ただただファンのみなさんや近しい人たちに感謝を伝えようと思って作りました。

モン吉:「ありがとう」のメロディは、そのときに作ったんじゃなくて、ちょっと前からあったんですよ。“最後のシングルは絶対、このメロディがいいな”と思って。

ファンキー加藤:自分たちがやりたいように作った曲なんですが、たくさんの人に愛してもらえる曲になったのかもしれないですね。もちろん、さんまさんのお力添えも大きかったと思います。先日、番組で共演させていただいて、さんまさんの目の前で「ありがとう」を歌わせてもらったんですよ。

モン吉:(MV完成後にはお会い出来ていなかったので)MVに出ていただいたお礼を、ずっと言えてなくて。10年経って、ちゃんと感謝を伝えられてよかったです。


♫ 明日へ (2009年)

11thシングル「ヒーロー/明日へ」収録。「第88回全国高等学校サッカー選手権大会」応援歌に起用され、MVに当時ジュビロ磐田に所属していた中山雅史が出演。

出典元:YouTube(dreamusic)

ファンキー加藤:この時期はたくさん楽曲を作って、たくさんリリースさせてもらっていて。いちばん忙しかったんじゃないかな。「明日へ」は、“もう一度、王道のファンモン応援ソングを作ろう”という話をしていたと思います。その前にラブソング、お父さんへのメッセージソング、アッパーチューンなどを出していたので、“これぞファンモン”と思ってもらえる応援バラードがそろそろほしいよねと。高校サッカーのテーマ曲だったよね?

モン吉:うん。ゴンさん(中山雅史)に出演していただいたんですが、パワー、エナジーがすごくて。本物のアスリートはやっぱり違うなと思いましたね。

ファンキー加藤:うれしかったですね。俺もモンちゃんも学生時代は運動部だったので。

モン吉:高校サッカーの決勝、国立競技場で「明日へ」を歌わせてもらったんですよ。貴重な体験をさせていただきました。


♫ あとひとつ (2010年)

第92回夏の高校野球の応援ソングに起用された14thシングル。ジャケット、MVに当時、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスに所属していた田中将大が出演。

出典元:YouTube(dreamusic)

ファンキー加藤:楽曲をリリースするときはいつも、“聴いてくれるみなさんの歌になってほしい”と願っているんですが、「あとひとつ」はまさに僕らの手元を離れていった曲で。それをいちばん実感したのは、2013年の(プロ野球)日本シリーズ。田中将大投手がメジャーに行く前の最後の登板で、Kスタ宮城球場(現:楽天モバイルパーク宮城)のみなさんが「あとひとつ」を大合唱してくれたんです。間違いなく球史に残るシーンだし、そこに携われたことが本当にうれしくて。リアルタイムでも見ていたし、今、思い出しても鳥肌が立ちますね。

モン吉:僕も中継を見てました。「あとひとつ」を編曲してくれた島田昌典さんから「このためにあった曲なんだね」と連絡がきて。ファンちゃんが言う通り、自分たちの手から離れて大きく広がった曲ですね。

ファンキー加藤:東北でこの曲を歌うときは、今も熱量が違いますね。フェスでも大合唱になるし、本当に特別な歌。自分たちも勇気をもらってます。


ファンモン再始動初のオリジナルアルバムが遂に完成

――ニューアルバム『ファンキーモンキーベイビーズZ』がリリースされます。再始動後、最初の作品ですが、手ごたえはどうですか?

ファンキー加藤:手ごたえはあります。自信作ですね。それぞれのソロ活動もそうだし、二人で再始動してから得たものも含めて、すべてを落とし込むことができたかな、と。いい意味で大人になったし、“らしさ”もちゃんとあって。出来上がったアルバムはいつもはあまり聴かないんですけど(笑)、今回はジョギングしながらずっと聴いてますね。

モン吉:ファンちゃんがファンモンの新作をこんなに聴いてるのは珍しいです(笑)。

ファンキー加藤:ハハハ(笑)。楽曲、歌詞、ミックスもすごく満足してますね。

――トラックもアップデートされていて。

モン吉:低音がしっかり出てますよね。以前は「ボーカルを聴かせるために、低音は控えめに」みたいな風潮があったけど、今はそうじゃなくて。自分たちが表現したいことを形にできてますね。今回のアルバム、全然飽きずに最初から最後まで1周してもらえると思うんですよ。そのままスッと2周目も聴いてもらって(笑)。

――収録曲についても聞かせてください。まず1曲目の「乙sound」。アッパーなトラックと“おっさん”をテーマにしたリリックの対比が最高です。

ファンキー加藤:ありがとうございます(笑)。年を重ねたことをカラッと笑えるというか。もともとは“カルビ”と“I’ll be”で韻を踏みたかったんですよ(笑)。

モン吉:それがこの曲の発端です(笑)。

ファンキー加藤:そこからはじまって、面白くて盛り上がれる曲にしたいな、と。

モン吉:パーティーチューンだよね。

ファンキー加藤:うん。これまでもそうなんだけど、アルバムに1曲か2曲はこういうタイプの曲を入れたくて。実は緻密に作ってるんですけどね。ビートやテンポ感もいろいろ試して。

モン吉:「この速さだとお客さんが大変なんじゃない?」とか。

ファンキー加藤:お客さんたちも年齢を重ねてますから(笑)。

モン吉:トラックはドラムンベースですね。トラップの流れもあって、ここ数年、また流行っていて。

ファンキー加藤:気持ちよくラップできるんですよね。

――トレンドも意識している?

モン吉:意識しつつ、「そのままやってもな」というところもあって。そこはバランスを取りながらやってますね。

ファンキー加藤:モンちゃんは新しい音楽をしっかり聴いてるし、いろんなアイデアをくれるんですよ。「この人、知ってる?」って若いラッパーの音源を送ってくれたり。みんな上手いんですよね……。

モン吉:でも、固い韻を踏みながら物語を作るのは得意でしょ?

ファンキー加藤:うん、そこは負けない(笑)。

――先行配信された「YOU」のほかにも、「荒野に咲く花」「エール」などの応援歌も心に残りました。リスナーの背中を押す楽曲は、やはりファンモンには欠かせないですね。

出典元:YouTube(dreamusic)

ファンキー加藤:そうですね。「音楽から元気や勇気をもらった」という自分の原体験もあるし、基本的に音楽は、誰かの笑顔や希望につながってほしいと思ってるので。あと、最近は悲しいニュースが多いじゃないですか。今まではそこまで世相を歌詞に反映させることはなかったんだけど、年を重ねたこともあるだろうし、ここ数年の世界はあまりにもひどいので……。下の世代のことも考えるようになりましたね。

モン吉:「ほろり」にも、そういうところが出てますね。デモの段階ではもっと生々しいことを書いてたんだけど、書き直しました。

ファンキー加藤:内容が難しかったんですよ。子どもからお年寄りまで楽しんでもらえるファンモンでありたいという気持ちもずっとあるので。

――「ラグソング」は、〈いつでも君を背中から守っていたいから〉というフレーズにグッとくる楽曲。ラブソングの表現も広がってますよね。

ファンキー加藤:ラブソングもかなり作ってきたので、最近はちょっとスパイスを加えたくなってますね。「君だけの歌」だったら、“君”を“歌”にたとえて、ラップパートに音楽用語を入れたり。「ラグソング」は“ラブソングとラグマット”からはじまってるんですよ。韻を踏む延長線上に物語を作れたらな、と。

モン吉:ファンちゃんの韻が戻ってきた感じがあるんだよね。

ファンキー加藤:そう?(笑)

モン吉:うん。違う言葉を結び付けて、そこからストーリーを作るのがさらに上手くなってて。

ファンキー加藤:確かに意味がかけ離れた言葉をつなげると、突拍子もないストーリーが生まれることもあるからね。それを楽しみながらやれてるのかも。

――「原宿陸橋」のラップもカッコいいですね。オールドスクールなヒップホップが新鮮でした。

モン吉:ローファイのトラックでラップしてみたくて。この曲は2年くらい前からあったんですけどね、実は。

ファンキー加藤:完成までが長かった(笑)。“モンちゃんが16小節ラップをすれば完成”というところから、だいぶ時間がかかって。

モン吉:待たせてしまいました(笑)。こういうラップ、懐かしいですよね。僕らが10代の頃、それこそ30年くらい前のヒップホップに近いけど、何周かして、また新しく聴こえるというか。

ファンキー加藤:そうだね。リリックは哀愁とか憂いみたいな雰囲気がありつつ、明確な答えは出してなくて。以前のファンモンは曲のなかでしっかり答えを出すようにしてたんですけど、この曲はリスナーの感情に委ねてます。

モン吉:東京の灰色の感じがすごく出てるよね。

――「こんな時代は伏し目がち / でも心の希望は朽ちてない」もそうですが、聴き手の状況や感情によって受け取り方が変わる曲だと思います。アルバムの最後は「今だってI LOVE YOU」。再始動、最初のシングルとしてリリースされた楽曲ですが、ファンに対する思いが強く反映されていて。

モン吉:そうですね。自分たちがどう思ってるか、まずは伝えたくて。

ファンキー加藤:長い間待たせてしまったBABYS(ファン)たちに「ありがとう」と言いたかったんですよね。バラードだと恥ずかしいから、アッパーな曲でラップしたいなと。

モン吉:このラップ、すごくいいよね。和製ビースティ・ボーイズという感じで。

――2006年のデビュー時に10代だったBABYSは、30代後半。社会に出てがんばっている方が多いと思いますが、オーディエンスに対する気持ちも強くなっているのでは?

ファンキー加藤:そうですね。「学生時代に聴いていました」と言ってもらえることもけっこうあって。ある放送局のディレクターなんて、「10代の頃、出待ちしてました」って(笑)。そういう世代の人たちが支えてくれてるんですよね。

モン吉:ありがたいね。

ファンキー加藤:先輩のアーティストから、「長く続けていると、大人になったファンがバックアップしてくれるようになるよ」と言われたことがあるんですが、自分たちもそうなってきたのかな、と。踏ん張り続けるもんですね。夏フェスでの反応も変わってきましたね。10代、20代の人たちが盛り上がってくれるんですけど、子供の頃、両親が聴いてて好きになってくれたみたいで。

モン吉:10年前は「爪痕を残したい」「名前だけでも憶えてほしい」という感じでステージに立ってたんですけど、今は出た瞬間から空気が出来上がっていて。嬉しい誤算です。

ファンキー加藤:ほんとだよね。「アウェイだろうけど、燃えるな」みたいな感じで出ていくと、めちゃくちゃウェルカムで(笑)。懐メロみたいになるのはシャクだから、大暴れしますけどね。

――6月からはじまる全国ホールツアー「太陽の街ツアー」も、幅広い年齢層のオーディエンスが集まりそうですね。

モン吉:楽しみですね。夏のツアー、実は初めてなんですよ。

ファンキー加藤:そうだね。ツアータイトルは、アルバムの制作前に決めました(笑)。地元の八王子から始まるんですけど、八王子は“太陽の街”なんですよ。

――ちなみにアルバムタイトル(『ファンキーモンキーベイビーズZ』)は、どうして“Z”なんですか?

加藤:えーと、ノリですね(笑)。

モン吉:(前作が『ファンキーモンキーベイビーズ 5』なので)今回は「6」だろうと思ってたんだけど、ファンちゃんが「それじゃないほうがいい」って言い出して。

ファンキー加藤:再始動後、初のアルバムが「6」だったら、一見さんは入りづらいかなと思って。「Z」を提案してくれたのはモンちゃんなんですけどね。すぐ「おもしろいじゃん!」と思ったし、カッコいいものって「Z」が付いてるじゃないですか。フェアレディZ、ドラゴンボールZ、ももいろクローバーZとか。

――確かに(笑)。次作のタイトルが難しそうですけど……。

モン吉:それはもう決めてます(笑)。

ファンキー加藤:発表されたら、「こいつら、やりやがった」って思ってもらえるんじゃないかな。楽しみにしててください(笑)。



森朋之
森朋之

関連アルバム

最新の記事

    share to facebook share to facebook share to facebook share

    Ctrl + C でコピー