愛と究極の暴力。ラナ・デル・レイの心地よい暗さ

愛と究極の暴力。ラナ・デル・レイの心地よい暗さ
齋藤奈緒子
齋藤奈緒子

2011年、自分で監督・編集した「Video Games」をYoutubeにアップしたのがきっかけで大ブレイク。美人なのに幸薄い歌詞(「Video Games」は、彼氏は私よりゲームに夢中だけど、彼のこと好きだからそれでもいいのという歌)、スローで倦怠感ただようサウンドなのに、不思議とポップ。そんなラナ・デル・レイのデビューアルバム『Born To Die』は、UKを含む世界12か国でNo.1を記録した。そんな薄幸の佳人が2年ぶりに発表したセカンド・アルバムの名前は、『Ultraviolence』=究極の暴力。この人がハッピーになる日は一体いつに…。 『Ultraviolence』は、作詞をラナ本人、プロデュースには、最新アルバム『Turn Blue』がマイケル・ジャクソンの新作をおさえ全米No.1に輝いた、2人組ブルース・バンド、ザ・ブラック・キーズのダン・オーバックが参加。前作よりもややギターが前面に出ているものの、ダウンテンポ加減と暗さはさらに増している気が。先行シングル「Brooklyn Baby」は、ルー・リードとデュエットするためにNYに飛んだその日、ルーが心臓疾患で死亡するという悲しいエピソードを持つ曲で、歌詞には<彼がギターを弾いて、私がルー・リードを歌うの>という一節も。タイトル曲の「Ultraviolence」は、<彼はあたしを殴る(それがまるでキスみたいに感じるわ)>というリフレインがショッキングだが、これはザ・クリスタルズの1962年の曲のタイトルからの引用。ささやくようなヴォーカルを幾重にも重ね、眠るのか、意識を失うのかわからないゆるやかなサウンドは、まるで砂のお城のように綺麗で、儚い。 『Ultraviolence』は、6/18付のビルボード・チャートで全米初登場No.1をマーク。これはラナにとっては初の快挙となる。先日、「ガーディアン」紙に、彼女が敬愛するカート・コバーンやエイミー・ワインハウスが27歳で亡くなっていることに関して、28歳になった彼女が「私、とっくに死んでいたらいいのにって思う」という発言が掲載されるなど、ネガティブっぷりは相変わらず。これに対してカートのひとり娘・フランシスは「人生をムダにしないで、あなたには才能がありすぎるわ」とツイート。このフランシスの意見に反対の人は、誰もいないはずだ。

齋藤奈緒子
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