ジャケット・デザインの世界 第2回:マット・メイトランド
第1回のヒプノシスが好評だった「ジャケット・デザインの世界」第2回は現役バリバリのアートディレクター&デザイナー、マット・メイトランドです。彼は1971年イギリス・ハートフォードシャー出身、キャリアの最初は90年代前半にワーナー系のWEAレコードで社員デザイナーとしてマーク・アーモンド、トンプソン・ツインズ、スミスなどのシングル盤の仕事からスタートします。最も印象的なWEA時代の仕事のひとつ、バビロン・ズーの1stアルバム。突如としてデビューしましたが、このヴィジュアルから何か得体の知れないカリスマ性が感じられます。次第に売れっ子デザイナーとなり別名で他のレーベルの作品も手がけ、90年代なかばにはロンドンのデザイン・スタジオ、Big Activeに転職。20周年となるバンドエイドのシングルという大きな仕事を引き受けます。中のブックレットを差替えると様々なデザインを楽しめる。CDシングルをバリエーションで楽しんだ作品。この時期からマットの「ヴァージョン違いデザイン」というひとつの売りとなる手法が始まります。アーティストの画像を使わずCGで未来的なイメージを換気させるスノウ・パトロールのアートワーク。少々ビョーク的なアプローチも感じられます。動物に近未来的民族衣装なデコレーションを施すベースメント・ジャックスのバリエーション。このスタイルは後にビッグスターのデザインの布石となっていきます。スウェーデンのエレクトロ・ユニット、ギャランティスが2014年にリリースしたアルバム『Pharmacy』とシングルのバリエーション。不気味な目つきの猫が強く印象に残る彼の代表作。被写体から少々困惑の表情が感じられるところが実に面白いカブリものの実写。「これかぶるんですか?」と聞こえてきそうです。ということから他のジャケットと比べるとちょっと目力に欠けます。マイケル死後初の未発表テイクを集めて発売された『Xscape』は通常盤、リミックス付き、デラックス盤とこちらもバリエーションあり。強い目の表情とデコレーションはベースメント・ジャックス、ギャランティスと共通するものが感じられます。プリンスとマイケル、両方とも2014年3月のリリースなので、発注は秘密裏に同時期だったのでしょうか?最初に紹介したバビロン・ズーの頃から一貫したアーティストの「目力」を中心に置いたデザイン。よく考えるとみんなカメラ目線です。一転して、映画のワンシーンを切り取ったかのような生々しいスナップ風の写真によるラナ・デル・レイのアルバム『Ultraviolence』とシングル。オルタナ感、そして彼女のアーティストとしての強さをうまく引き出しています。 マット・メイトランドは音楽のジャケットなどのグラフィックのみならず、ムービー(動画)でも広告、雑誌、ファッションの世界でも、そのヴィヴィッドな色使いとインパクトのあるデザインでイギリスを代表するアート・ディレクターとして活躍中。下のリンク先で彼のジャケット以外の作品もチェックしてみてください。 出典 ■Mat Maitland – Big Active http://www.bigactive.com/artists/mat-maitland/ ■Mat Maitland http://matmaitland.com
The Boy With The X-Ray Eyes / Babylon Zoo 1996
Do They Know It's Christmas? / Band Aid 20 2004
The Information / Beck 2006
Eyes Open / Snow Patrol 2006
Scars / Basement Jaxx 2009
Pharmacy and Singles / GALANTIS 2014
You Need Me On My Own / Totally Enormous Extinct Dinosaurs 2012
Xscape / Michael Jackson 2014
FALLINLOVE2NITE / Prince 2014
Ultraviolence / Lana Del Rey 2004