焦燥感・衝動・ポップネス、90年代後半の空気が永久保存された伝説のライブ盤

焦燥感・衝動・ポップネス、90年代後半の空気が永久保存された伝説のライブ盤

「ナンバーガールのライブを、本当に本当に、観てみたかったんです。それをリアルタイムで観られなかったことが悔し過ぎて、今でもライブ盤は聴くことができない」と語るハタチそこそこの青年と話す機会があった。 「何言ってんのさー」なんてその時は言ったけれども、…げに。ナンバーガールというバンドとともに学生時代を過ごせた自分は幸運だったことこの上ないし、彼らのライブに通い詰めた自分を誇りに思っているのも確か。 1999年の暮れ、当時のナンバーガールとリスナー・その周囲にあった異様なほどの熱狂だかはたまた殺気だかなんなのか、いろんな不気味な情熱がコンパイルされたこのライブアルバムが世に放たれた。当時高校3年生だった自分は夏に彼らのデビュー・シングル「透明少女」のMVを初めて観た時から突然魅了されてしまい、第1回ライジング・サン・ロックフェスティバルでのパフォーマンスをテレビを通して観て圧倒されていた。そこにとどめのように突き刺さったのがこのライブ盤だった。 「さっさと大学入試を終えて、大学生になってナンバーガールのライブに行きまくるんだ。来年の夏にはエゾにも行ってみたいんだ。」と息巻きながら高校と予備校との家のトライアングルの中で生活していたスクールガール。 ライブなんて行っている時間は、現役受験生には許されていない状況だった。そんな受験も迫る12月にこの音源を聴いた時の衝撃といったら。とにかく急かされている感じ、つまり焦燥感がそこにはあった。 渋谷クラブクアトロというあの箱に詰まった観客の嬌声とも叫びともつかぬものと彼らの轟音そして向井秀徳の謎のMCがいっしょくたになって届いてくる。この化け物のようにムクムクと周りを巻き込みながら増大しているナンバーガールって、なんなんだ?!なんで自分はこんなに夢中になんだ?まだライブも観たことないのに!早く観ないと!今すぐにでも…。そうしてナンバガばかり聴きながら受験を終え晴れて大学生になった自分は、東京での彼らのライブにひたすら通ったのだった。 ライブ未経験のミュージシャンのライブ盤でここまで夢中になって聴いたのは、恐らくこれが人生で最初の経験だったし、あの日からすでに10年以上の月日が過ぎたがこの経験を超えるものにもまだ出会えていない。 というか、この「Addict」な感触は、きっと永遠だ。これを書く間に聴いている今も、鳥肌が立つ。とはいえこれを「自分の青春」としてこっそりしまっておくわけにはいかない。 解散から10年、ナンバーガールを知らない世代にも是非届いてほしい1枚です。

スズキエミリ
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