ジャケット・デザインの世界 第6回:横尾忠則

ジャケット・デザインの世界 第6回:横尾忠則
永見浩之
永見浩之
横尾忠則(よこおただのり、1936年6月27日生まれ)は、兵庫県西脇市出身の美術家、グラフィックデザイナー。アメリカのポップ・アートの影響を強く受け、70年代を中心に精神世界、宗教世界を感じさせつつもどこかポップでカラフルなグラフィックデザインで活躍している。 80年代に入りNYでのピカソ展に啓示を受け、いわゆる「画家宣言」をし、滝やY字路シリーズに代表されるような極私的な絵画の世界に入っていく。自身がロック・カルチャーに精通していたこともあり、レコードジャケットのデザインも数多くやっているが、その作風も自身の作家性とシンクロして、コラージュを主体としたグラフィックからドローイングと変遷する様が読み取れる。 国内のみならず、海外のアーティストからの依頼も多いが、この先アルバム・ジャケットを描いてみたいアーティストはローリング・ストーンズだという。
Lotus / Santana 1974
横尾氏の集大成とも言える驚異の22面ジャケット。実際のLPで部屋に広げるとそのスケールに圧倒されること間違いなし。音源は1973年7月の大阪厚生年金ホールでのライブ。当時、インドの宗教家、シュリ・チンモイの教えに傾倒していたカルロス・サンタナが繰り広げるスピリチュアルで壮大なサウンドとジャケが見事にシンクロしています。
Agharta / Miles Davis1975
マイルス・デイビスによる「エレクトリック・マイルス」の集大成というべき1975年2月1日大阪コンサート午後の部を完全収録したアルバム。これは、アルバムタイトルも横尾氏が命名。彼が興味を持っていた「アガルタ世界」とも呼ばれる地球空洞説を基に地の底に広がる世界を描いている。
Amigos / Santana 1975
宗教臭い作品を抜けて、ダンサブルなラテンロックに戻ってきたサンタナ。 ジャケットも極彩色のジャングルで、精神的なものから、肉体的な官能への回帰をうまく表現してるように思えます。ここからはサンタナの演歌チックなインストの「哀愁のヨーロッパ」が大ヒットしました。
BABY BLUE / 伊藤銀次 1982
伊藤銀次の2作目のソロ・アルバム。パッと見でこのジャケを横尾作品と気づく人は、なかなかの上級者かも。青い素直なタッチのペインティングはいつになく爽やかで、中身である甘酸っぱい青春ポップスとよくマッチしています。彼の優しい歌声も胸を打つ名盤です。
架空庭園論 / 井上鑑1985
彼のデザインの特徴として、筆で漢字タイトルを大胆に入れるものが多いですがこれもそう。かつては、寺尾聰の「ルビーの指輪」の編曲もやったトップ・サウンド・クリエイター井上鑑のソロ4作目。琴など和楽器を大胆に使用して、音の実験度がさらに増しているようです。
おもしろ遊戯 / 桃井かおり 1991
絵画に目覚めてからの、桃井かおりを正面から捉えたポートレート。柔らかくいタッチで艶っぽく描かれています。作詞、作曲は阿木よう子、宇崎竜童コンビ。歌謡レゲエなど、いろんな曲調で、アンニュイな彼女のヴォーカルが楽しめる。
Loudness / Loudness 1992
横尾忠則meetsヘヴィメタル、という意外な組み合わせ。元EZOの山田雅樹と元Xの沢田泰司が加入した第3期LOUDNESS。彼らのオリジナルアルバムの中では最高の売上となった。
Millennium / Earth, Wind & Fire 1993
彼らのコンセプトによく登場してくるピラミッドやアルバム『太陽神』のジャケットを手がけたのは故・長岡秀星でした。モチーフが横尾忠則の世界観に通じるものがあってこの組み合わせは不思議ではない。前作から3年ぶり、ワーナーへの移籍第1弾で心機一転したEW&Fだが、時代的に役目は果たしたかな。 ※このアルバムは原稿執筆時にKKBOXで配信されていません。
Save Our Children / Pharoah Sanders 1998
この頃になると彼のコラージュにもデジタルの匂いがします。ジョン・コルトレーンの跡を継ぐとまで称されるファラオ・サンダース。ビル・ラズウェルがプロデュース。彼の作品の中ではかなりポップでファンキーなものになっている。
雪の宿 / 新沼謙治 2012
なんと新沼謙治のジャケまでやっていたとは。新沼氏がデビュー当初に可愛がってもらった横尾さんに直接連絡をして書き下ろしジャケットを依頼したらしい。岩手県出身の彼が震災後に復興の願いを込めて母校の大船渡市立第一中学校の生徒と歌った歌。
永見浩之
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