あの時見た夏アニメの音楽を僕達は忘れない

あの時見た夏アニメの音楽を僕達は忘れない
山本雅美
山本雅美

2021年上半期の映画興行収入ナンバーワンは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で100億円を突破、アニメーション作品のパワーを改めて思い知らされました。そしてこの夏に公開され、現在大ヒット中のアニメーション作品が細田守監督の『竜とそばかすの姫』です。

出典元:YouTube(東宝MOVIEチャンネル)

主人公は高知の自然豊かな村に住む17歳の女子高生・すず。母と一緒に歌うことが何よりも大好きでしたが、幼い頃に母を亡くし、それをきっかけに歌うことができなくなります。そして、すずは現実の世界に心を閉ざすようになり、超巨大インターネット空間の仮想世界〈U〉で、曲を作ることだけが生きる糧となっていきます。やがて〈U〉で大人気となり、遂にコンサートが開かれることに。『竜とそばかすの姫』は、歌が大きなモチーフとなっているので、作品内では音楽の聴きどころが満載。また主人公・すずの声を演じるのが、インディーズで活動するシンガーソングライターの中村佳穂。そして主題歌は、 Belle(中村佳穂) とKing Gnuの常田大希が主宰する音楽プロジェクトである millennium paradeによる「U」という曲というサプライズ。



そして、もうひとつ紹介したい作品が『サイダーのように言葉が湧き上がる』。アニメーション映像&音楽レーベル『フライングドッグ』10周年を記念して制作された完全なオリジナル作品です。人とのコミュニケーションが苦手な俳句好きの少年と、コンプレックスを隠すマスク少女。何の変哲もない郊外のショッピングモールを舞台に出逢ったふたりが、言葉と音楽で距離を縮めていくボーイ・ミーツ・ガールStory。

出典元:YouTube(松竹チャンネル)

“17回目の夏に君と会うー”というキャッチコピーからみても、思いっきり甘酸っぱい夏を堪能できそうです。テーマソングは never young beach、劇中歌を大貫妙子が担当、新しくて懐かしいシティポップ・サウンドを楽しむことができます。監督は「四月は君の嘘」のイシグロキョウヘイ、主人公のチェリー役に初映画・初声優・初主演となる歌舞伎界の超新星である八代目市川染五郎、ヒロインのスマイル役はNHK『おちょやん』に主演した注目の若手女優・杉咲花が担当するのも注目です。



最新の夏アニメもチェックしつつ、今回は記憶に残る夏アニメとその音楽を紹介していきます。


サマーウォーズ

出典元:YouTube(KADOKAWAanime)

夏の定番アニメと言えば細田守監督の『サマーウォーズ』。長野県上田市を舞台に、高校生の主人公・小磯健二が、憧れの先輩である篠原夏希の"ちょっとした用事"に付き合う事になり、そんな彼と彼女の家族たちが突如仮想世界と現実世界を襲った危機に対して戦いを挑む、ひと夏の物語です。主題歌である山下達郎の「僕らの夏の夢」とともに欠かせないのが、「サマーウォーズ」の夏の持つ空気感を引きだ出す松本晃彦の音楽です。多くの国際映画際で絶賛され、国内だけでなく世界中で愛される音楽となっています。



『サマーウォーズ』の音楽の聴きどころはたくさんあります。ドラマチックなメインテーマはもちろんですが、やはり印象深く残るのは、夏希のアバターが世界中の人々の協力を得てパワーアップし変身する場面で流れる「1億5千万の奇跡」です。このシーンは、細田守監督が一番大事に音楽を使いたいという想いがあり、「声を使った音楽をお願いしたい」という希望があったそうです。児童合唱がフィーチャーされた、感動的で美しいメロディになっています。



時をかける少女

出典元:YouTube(KADOKAWAanime)

2006年に全国でわずか6館で公開された『時をかける少女』は、評判が全国的に広まり、異例の8ヶ月を超える超ロングラン上映となった細田守監督のブレイク作品です。高校2年生の紺野真琴は、理科実験室に落ちていたクルミをうっかり割ってしまったことがきっかけとなり、時間を飛び越えて過去に戻る力「タイムリープ」を手に入れます。仲の良い男友達とともにいつもとは違う日常を思う存分満喫しながらも、「タイムリープ」を繰り返し残り回数が底をついた時、真琴は自分にとって一番大事なかけがえのない時間がそこにあったことに気づくのでした。主題歌は奥華子の「ガーネット」。制作サイドの「自由に感じ取ったイメージを曲にして欲しい」という要望を受け、絵コンテや脚本から、ストーリーや登場人物の心情を読み取って解釈してから制作された曲になっています。2019年には、アニメソング人気投票キャンペーン「平成アニソン大賞」において映画主題歌賞(2000年 - 2009年)に選出されました。



劇中では「アリア(ゴールドベルグ変奏曲より)」や、「第一変奏曲(ゴールドベルグ変奏曲より)」などのクラシック音楽も使われながら、テーマ曲となる「夏空」はオープニングやエンディングなど複数のバージョンがあり、夏の青い空をイメージさせる音像を作りあげています。映像のみならず、音楽的にいろんな発見をすることができる『時をかける少女』のサウンドトラックは、夏の昼下がりのBGMとしてもおすすめです。



打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

出典元:YouTube(東宝MOVIEチャンネル)

夏休みの花火大会を前に、港町で暮らす典道は幼なじみと灯台に登って花火を横から見る約束をします。その日の夕方、密かに想いを寄せる同級生のなずなから突然「かけおち」に誘われますが、母親に連れ戻され失敗。なずなを取り戻すために、典道はもう一度同じ日をやり直すことを願い動き出します。総監督を務めるのは『化物語』『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之。アニメーションスタジオ「シャフト」と最強タッグを組み、“繰り返される夏の一日”を描いたラブストーリーです。興行的には不発でしたが、主題歌となったDAOKO✖️米津玄師の「打上花火」が大ヒット。各ストリーミング再生ランキングでロングラン1位を記録、夏うたの代表的な曲になりました。



またキャラクターボイスも注目で、広瀬すず、菅田将暉、宮野真守などの豪華なメンバーがキャスティングされました。広瀬すずは劇中で、松田聖子のヒット曲「瑠璃色の地球」をカバー。試写室で自分の歌声が流れたときは、「このシーン早く過ぎて!」と思ったとのことで、「私の歌がCDになるのは最初で最後かもしれません!」と話しているので、この曲は本当に貴重なものになるようです。



あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

出典元:YouTube(シネマトゥデイ)

2011年4月から6月まで放送された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(通称:あの花)』は、日本中のアニメファンが涙しました。ひきこもりのじんたんの前に幽霊となって現れた、幼なじみ・めんま。それをきっかけに、今は別々の道を歩むかつての仲間たち“超平和バスターズ”の5人が再会、幼馴染の死という過去を抱えた若者たちの淡い恋や罪の意識の中で、それぞれに後悔を抱えながらも、めんまが何のために現れたのかを探っていくひと夏のお話です。オープニングテーマ曲は、Galileo Galileiの「青い栞」。叙情的なメロディと音数の少ないシンプルなアレンジでいながら、夏への期待感を高めてくれる楽曲で、こちらも夏の定番曲となっています。



エンディングテーマ曲は2001年にヒットしたガールズバンドZONEの「secret base ~君がくれたもの~」のカバー。『あの花」は、この曲の持つの世界観がそのままアニメになったかのようなシンクロ感があり、毎回この曲が流れ始めると涙腺崩壊してしまいます。そして「あの花」に登場する3人の女の子のキャラクターボイスである茅野愛衣、戸松遥、早見沙織が歌っているのもエモさを増長させてくれます。



また、劇中で流れるREMEDIOSによるサウンドトラックも必聴です。「あの花」の鮮やかな光景が蘇るのはもちろん、夏のどんなシチュエーションにもぴったりなインストゥルメンタル曲に癒されます。



聲の形

出典元:YouTube(KyoaniChannel)

聴覚の障害によっていじめを受けるようになった少女・硝子と、彼女のいじめの中心人物となったのが原因で、逆にいじめの対象となり孤独になっていく少年・将也。将也は自己嫌悪と後悔の涙を流し自分なりの贖罪をしていこうと決意します。やがて5年の時を経て高校生になったふたりは再会します。前半のいじめの描写はとても重く残酷です。しかし本質的に描かれているのは障害やいじめではなく、“誰かと繋がりたいのに繋がれない”という現実、そして繋がることで理解しあうことの大切さです。『聲の形』は夏をテーマにした作品ではありませんが、物語を大きく転換させる重要なシーンが夏の花火大会の描写であり、印象的であるので夏アニメの一つとして紹介します。オープニングで流れるのは、攻撃的なサウンドと「年とる前に死にたい」というティーンエイジャーのフラストレーションを表現したThe Whoの「My Generation」。『聲の形』でこれから起きることの予感を感じさせます。



劇版音楽を担当したのは牛尾憲輔。『聲の形』の世界感に寄り添うように、劇伴音楽は繊細かつ丁寧に作られています。サントラ盤には61曲もの音楽が収録、その中から映画では約50曲が使われています。登場人物たちの声にできない声を音楽で見事に表現しています。また牛尾憲輔は作中でも重要な役割を果たす補聴器に注目。補聴器がどれぐらいノイズを拾うのかを追求した結果、アップライトピアノを解体し、その中にマイクを設置。鍵盤に爪が当たる音、押された鍵盤によって木製のハンマーが動く音、消音ペダルを踏んだときのフェルトが擦れる音、弦が鳴ったときの共鳴板がきしむ音などをレコーディングし、音楽を作り上げています。とても実験的な作品作りですが、ノスタルジックな雰囲気や音に包み込まれる感じはとても新鮮です。是非聴いてみてください。




山本雅美
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