カバーソングの深いい話〜あの名曲カバーから、驚きのカバーソングまで〜

カバーソングの深いい話〜あの名曲カバーから、驚きのカバーソングまで〜
KKBOX編集室
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曲は何世代にも渡り語り継がれていきます。特に、ここ数年巻き起こっているカバーソングブーム。宮本浩次や上白石萌音、JUJUなどさまざまなアーティストたちがカバーアルバムを発表しています。また昨年は筒美京平や松本隆のトリビュートアルバムがリリースされ、現代のアーティストたちによって70年代&80年代ポップスの名曲が新しく生まれ変わりました。カバーソングの良い点は、新たな歌い手によって過去の名曲が聴き継がれ、歌い継がれることです。そこで今回はいま注目のカバーソングや、レアなカバーソングなどを紹介。カバーソングの楽しさを味わって頂きたいと思います。

前代未聞!! 「深夜高速」1曲だけのトリビュートアルバム

出典元:YouTube(三井住友銀行(SMBC)公式チャンネル)

岡崎体育がラグビー日本代表の稲垣啓太選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)とともに出演するSMBCグループの新テレビCMソング。夢が破れても、別の世界で頑張っていく男性の姿を描いたCMが話題です。このCMで使われているのが岡崎体育がカバーした「深夜高速」。〈生きていて よかった〉というこの曲を象徴するサビが聴く人の胸に迫ります。「深夜高速」はフラワーカンパニーズが2004年にリリースした楽曲で、これまでにも多くのアーティストが、その歌の世界観をリスペクトし続けてきました。

そして2009年には、斉藤和義や泉谷しげる、GO!GO!7188など13組のアーテストが「深夜高速」の1曲だけをカバーするという前代未聞のトリビュートアルバム『深夜高速-生きててよかったの集い-』も発表されています。

このアルバムには「深夜高速(2009)」としてセルフカバーバージョンが収録されたほか、GO!GO!7188や金子マリなどによる女性アーティストが歌う「深夜高速」も聴くことができます。テレビCMを通じて「深夜高速」にハマった人は、さまざまなアーティストが歌う「深夜高速」と〈生きていて よかった〉という叫びに耳を傾けてみてください。

異なる2曲が重なり合うマッシュアップ・カバー曲がすごい

出典元:YouTube(maidigitv)

おしゃれな世界観を表現したテレビCMとして話題となっているのが、サントリーチューハイ「ほろよい」です。小沢健二とスチャダラパーがコラボレーションした1994年のヒット曲「今夜はブギーバック」と、tofubeatsが2012年に発表した「水星」の2曲がマッシュアップソングとして起用されたことでも大きな注目を集めています。しかもこの2曲はアニメバージョンでは佐藤千亜妃とkZmが、実写バージョンでは池田智子とTENDREがそれぞれカバーするという贅沢さ。オリジナル曲を知らない世代の人にも、2022年的なコラボレーションで新しい空気感を持つ作品として受けとめられ、オリジナル曲の再評価に繋がっています。

またこのように2つの曲を重ね合わせる手法をマッシュアップというのですが、実は3年前の2019年にも大きな話題となった作品がありました。それはくるりの「ばらの花」とサカナクションの「ネイティブダンサー」で、この2曲がマッシュアップされ発表されたのです。これは二階堂ふみ、染谷将太が出演する相鉄都心直通記念ムービー「100 YEARS TRAIN」に起用されたもので、公開直後に大きな話題を呼び、音源化を希望する声が多数上がったため急遽リリースされました。カバーしたのはyui(FLOWER FLOWER)とミゾベリョウ(odol)で、男女のツインボーカルによりそれぞれの曲の奥行きや流れなどが絶妙に重なり合っています。

出典元:YouTube(oricon)

また岸田繁、山口一郎からも賛辞のツイートが投稿されるなど、この取り組みをリスペクトしていたことが伺えます。

〈カバーの女王〉と〈カバーの歌姫〉は誰だ?

定期的にカバーアルバムを発表し、様々な名曲を歌い継ぐ女性アーティストたちがいます。その筆頭に上がるのはJUJUではないでしょうか。これまでに『Request』『スナックJUJU〜夜のRequest〜』など様々なカバー企画アルバムをリリース。ライブでもカバー曲を中心とした「ジュジュ苑」を2008年から定期的に開催、まさしく〈カバーの女王〉と言えるほど積極的にカバーソングに取り組んでいます。また最近では、松任谷由実の作品だけをカバーした『ユーミンをめぐる物語』をリリースして話題になっています。

出典元:YouTube(JUJU Official YouTube Channel)

JUJU本人も「マニアって言っていいくらいユーミン・ファン」と語っている通り、このアルバムではヒット曲以外の隠れ名曲も多数カバーされています。そしてユーミンが歌っているのかと思うほどの表現力を持つJUJUの歌声は必聴です。

出典元:YouTube(上白石萌音)

若手世代のアーティストでは、NHKドラマ『カムカムエヴリバディ』が話題となった上白石萌音のカバーソングが注目されています。歌手としてのデビューアルバムは、映画主題歌をコンセプトにしたカバーアルバム『chouchou』。自身がヒロイン役を演じた『君の名は』の主題歌「なんでもないや」や「Woman “Wの悲劇"より」「366日」(映画『赤い糸』主題歌)など6つの曲をカバーしています。そして昨年は、1970年代から80年代の日本のポップスをカバーしたアルバム『あの歌-1-』と、90年代の名曲をカバーした『あの歌-2-』を同時リリース。21曲もの名曲を表情豊かに歌いあげ、オリジナルの名曲たちに新たな風を吹き込んでくれました。なかでもフィッシュマンズやザ・ブルーハーツなど、1990年代のバンドの名曲カバーは意外性と同時に、非常に新鮮な印象を与えてくれます。

もともと両親の影響で昭和の名曲たちにも多く触れて育ち、昭和・平成ポップスが大好きという上白石萌音。本人自ら「カバーアルバムをリリースしたい」と強く希望して実現した企画だったそうです。そしてリリースの際は「おこがましいのですが、自分を介して新しい曲やアーティストを聴くきっかけになってもらえたら嬉しい」とも語っています。映画やドラマで演じる役と同様、時間を超えて良き歌を歌い継いでいく〈カバーの歌姫〉としても、ますます輝きを放っていって欲しいと思います。

骨太な男性アーティストがカバーするアイドルたちの夏ソング

エレファントカシマシの宮本浩次が2020年にリリースした『ROMANCE』は、自身が慣れ親しんだ80年代〜90年代にヒットした女性アーティストたちの名曲を収録したカバーアルバムです。その中で最も王道の歌謡曲ナンバーが「白いパラソル」。オリジナルと同様に爽やかでキラキラした夏の恋を歌い上げています。大瀧詠一的なサウンドアレンジと絶妙にマッチした宮本浩次の歌声は、このアルバムだけでしか聴けない必聴ナンバーです。

2曲目は怒髪天がカバーした1978年のヒット曲「夏のお嬢さん」。男だらけの暑苦しいコーラスが最高で、冒頭の〈チュウ チュウ チュ チュ〉から怒髪天節が炸裂しています。オリジナル曲の世界観をここまで変えることができるのかと驚愕です。さすが怒髪天。カバーソングながらいつも以上の怒髪天サウンドが炸裂しています。

そして3曲目は早見優が1983年にリリースした「夏色のナンシー」。最近の昭和ポップスムーブメントの中でもよくクローズアップされているこの曲を氣志團がカバーしています。キラキラしたオリジナルのメロディラインをそのままに、90年代のメロコアフレーバーでアレンジされた「夏色のナンシー」は躍動感溢れるカバーナンバーになっています。デビュー以来変わることがない変形学生服にウルトラリーゼントというやんちゃなスタイルで歌う「夏色のナンシー」。クセになってしまいます。

出典元:YouTube(氣志團TV)

いかがでしたか。オリジナルとはひと味も、ふた味も違うカバーソング。是非聴き比べてみてください。


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