絵本作家 キース・リチャーズ!?

絵本作家 キース・リチャーズ!?
内田正樹
内田正樹

ザ・ローリング・ストーンズのキース・リチャーズが、なんと初の絵本を上梓した。 CD付き絵本 「ガス・アンド・ミー ガスじいさんとはじめてのギターの物語」(ポプラ社。発売中)は、物語をキースが執筆し、彼の愛娘セオドラ・リチャーズが絵を、日本のミュージシャン奥田民生が邦訳を手掛けている。物語はビッグバンドのミュージシャンだった祖父のガスじいさんから、幼いキースがギターを与えられ、音楽の魅力に目覚めるまでを描いたもの。つまりキースの自伝的な作品である。 その昔は奔放と享楽の限りを尽くした“ならず者”として知られたキースだが、2011年に上梓した自叙伝「ライフ」は全米一位のベストセラーを記録するなど、実はものすごく豊富なボキャブラリーの持ち主だ。そんな彼が書いた絵本は、まず飾り気のない文体に好感が持てる。そして祖父のことが大好きな様子も、手にした嬉しさからギターを抱いて寝た描写も、全てがピュアで微笑ましい。奥田の訳も適温だ。 そして付属のCDには、キースによる本編の朗読が収録されている。決して美声ではないけれど、不思議と安らかな気持ちにさせられる声だ。もちろんキース自身のプレイによるギターの演奏も聴こえてくる。物語のなかで、祖父のアドバイスから「マラゲーニャ」(※スペイン舞曲)をマスターしようと一生懸命練習に励むキース少年の姿とメロディは、まさしくストーンズの楽曲において時折見られる、あのエスニックなテイストのルーツそのものだと気付かされる。 御歳70歳。音楽家は自らがキャリアの後期に在ると悟ると各々に設定した目標へと向かう傾向があるが、彼のそれは自らの源流を辿り、伝えることにあるようだ。心ときめく音楽の魔法が詰まったこの絵本、粋なクリスマスプレゼントや、これから楽器をはじめる人へのギフトにも向いていると思うので、チェックしてみては?

内田正樹
内田正樹

関連アルバム

最新の記事

    share to facebook share to facebook share to facebook share

    Ctrl + C でコピー