福原美穂「答えはYESしかなかった」

福原美穂「答えはYESしかなかった」
松浦靖恵
松浦靖恵

エグゼクティブプロデューサー・Heiko Schmidtとサウンドプロデューサー・Robert GEO Rosanが、歴代ボーカリストと共に、クール&ホットな音楽を提供し続けてきたドイツ出身ユニット、Sweetbox。90年代半ばにデビューし、全世界で約1000万枚のCDセールスを誇るこのユニットの6代目ボーカリストに、福原美穂が抜擢された。7月3日に日本発売されるアルバム『#21』は、Sweetboxにとってアジア人初のボーカリストとなった福原美穂とアンティグア出身のラッパー・Logiq Pryceを迎えた新生Sweetboxによる第一弾作品だ。 ■エグゼクティブプロデューサーのHeiko Schmidtは、福原さんの歌声に惚れ込んで、6代目ボーカリストとして加入してほしいと、直接依頼されたそうですね。 □福原美穂:私は子供の頃から海外で活動したいという夢を持っていたし、自分の信じた道をどんどん進んでいくタイプなんですけど、今回ばかりはあまりにも突然の出来事だったので、本当にビックリでした。 ■これまでSweetboxが発表してきた楽曲は、全世界の人たちに聞かれているということを思うと、大きな責任を感じたのでは? □福原美穂:はい。大ヒットした「Everything’s Gonna Be Alright」はもちろん、Sweetboxの楽曲はよく耳にしていたので、プレッシャーはありました。ただ、この素晴らしいチャンスを断る理由が何も見つからなかったので、答えはYESしかなかったですね。私はこれまで自分のプロジェクトの中で音楽活動をしてきたけれど、彼らは私の声をこんなにも必要としてくれているのだから、自分の声という素材を全て彼らに預けてみようと覚悟を決めました。 ■Heikoからは、どんな言葉をかけてもらいましたか? □福原美穂:まず最初に、“君の声と笑顔が欲しい”と言われました。 ■とても素敵な言葉ですね。 □福原美穂:ええ。その言葉で気持ちがとても楽になりました。ただ、話が決まってからレコーディングまで1ヶ月もなかったので、気がついたらロスに向かう飛行機の中! って感じだったんですよ(笑)。 ■ロスでのレコーディングは、いかがでしたか? □福原美穂:(ロスのスタジオで)私の歌を直接聞いたHeikoに新たなインスピレーションが生まれたり、お互いにやりとりをしたりしながら、新しいアイディアが出てきた(アルバムの)イメージがどんどん変化していきましたね。とにかく、彼らが作った音を聞いている段階から、今までのSweetboxとは異なる世界観を持ったアルバムになるんだろうなと感じられたし、私と一緒にラッパーのLogiqも新たに加入したので、2013年のSweetboxはかなり攻めているなって思いました。 ■スタジオでのエピソードを教えて下さい。 □福原美穂:とにかく、2週間弱の滞在中に14,15曲歌ったので、まるで千本ノック状態でした(笑)。英語詞の意味をちゃんと理解してから歌いたかったので、歌入れの前日には必ず自分で英語詞の和訳をしたり、歌詞の1行を何度も何度も納得のいくまで、1時間くらいかけて歌ったり。10曲目の「My Understatement」は、畳みかけるような歌詞なので、英語の発音を気にしながら歌うのは本当に大変でした。まるで軍隊に入ったかのようなレコーディングでしたけど、Heikoは飴とムチの使い方がホントに上手なんですよ(笑)。 ■飴とムチ! 飴は何だったんですか? □福原美穂:スタジオの外に出ること(笑)。私がスタジオ内で煮詰まっていると、Heikoが「ロスの太陽を浴びておいで」って言うんです。たった10分だけの外出なんですけど(笑)。彼いわく、太陽光を浴びると体の中のビタミンが増えるから、ストレスが緩和されるんですって。 ■クラシック音楽をサンプリングしたサウンドが、Sweetboxの大きな特色ですけど、今回のアルバムにも様々な仕掛けがほどこされていますね。 □福原美穂:そうなんです。このアルバムも、いきなり映画『2001年宇宙の旅』で使われていたアノ曲から始まっちゃう(笑)。実は、Heikoって、この曲は脳にいい影響を与えてくれるとか、この音階にはリラックス効果があるとか、いろんなマーケティングリサーチをした上で何をサンプリングするかを決めているんですって。 ■「Aases Death」には宮澤賢治の詩『雨ニモマケズ』の語りが入っていますけど、このアイディアを提案したのは福原さんなんですか? □福原美穂:当初はクリスチャンのお葬式で牧師さんが言う言葉を入れる予定だったんですけど、私が日本のエレメントをどこかに入れたいと言っていたことをHeikoが覚えていてくれて、日本の有名な詩を入れようって言ってくれたんです。教科書にも載っているくらい誰もが知っているクラシカルな詩がいいだろうということで、宮澤賢治の『雨ニモマケズ』にしたんですよ。 ■ラッパーのLogiqはどんな方ですか? □福原美穂:初めて会ったのは「#Z21」のMV撮影の時だったんです。でも、Logiqとは会った瞬間から意気投合してしまって、すぐにブラザー&シスター状態になってましたね。未だにLogiqからはメールが来るんですよ。彼は料理が趣味なので、「今日は魚を焼いた」とか「何を食べた」とか(笑)。 ■「#Z21」のレコーディングでは、新しい挑戦をすることが多かったと思うんですが、福原美穂個人のルーツミュージックは何ですか? □福原美穂:実家ではいつもラジオがかかっていたり、音楽好きの父が聴いていたB.Bキング、カントリーシンガーのアン・マーレー、ビートルズ、ボブ・マーリー。姉がよく聴いていた90年代のR&B。あと、おばあちゃんがよく聞いていた美空ひばりさんの歌を、小さな頃はよく歌っていたみたいです。とにかくジャンルに関係なくいろんな音楽を聴いてましたね。 ■では、最後に。Sweetboxでの経験は、福原美穂にどんな影響を与えてくれましたか? □福原美穂:このプロジェクトに参加して、エンタティンメントにおいていちばん大事なのは、人を楽しませることなんだということを学びましたね。あと、自分が押すスイッチではなく、自分自身が気づいていなかった表現のスイッチを押してもらう面白さを知ることができたので、いろんなチャレンジをしていきたいです。目の前にどんな大きな山があろうとも、それを乗り越えなければ見ることができない景色がある、挑戦しなければ得られないものがある。そして、このチャンスは必ず次なるものに繋がっていると信じてます。

松浦靖恵
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