指田郁也、憧れの初ホールライブが実現!

指田郁也、憧れの初ホールライブが実現!
松浦靖恵
松浦靖恵

6月21日に東京国際フォーラムで行われた「指田郁也“しろくろ”しくよろTOUR 2014」追加公演。デビューから約2年8ヶ月。以前から憧れていたというこの会場で、指田郁也の初ホール・ライブが実現した。 まるで夜の訪れを告げるかのように、ゆっくりと客電の光量が落ちていく。ライブの幕開けを告げたのは、時を刻む音のようにも聞こえ、夜空に光り輝く星を思い浮かべてしまうような清らかなピアノの音色だった。 場内が真っ暗になった次の瞬間、ステージ中央に現れた指田郁也は、光(照明)の中にすくっと立ち、無伴奏で、♫僕の声は聞こえますか? 届いてますか?♫と、ステージを見つめる観客たちの元へ、力強い声を放った。 そう、指田郁也の初ホール・ライブは、彼の最大の武器である声から始まったのだった。バンド演奏がスタートすると、ステージ中央にセッティングされたグランドピアノを立ったまま弾きながら、「哀シテホシイ」「パラレル=」「○月×日なぜか海へ向かう」を立て続けに歌った。バンドと共に作り上げた音の中に、自由自在にフェイクを乗せていったこの3曲は、ライブの始まりにとても似合う曲だった。弾き語りからバンド・アレンジへと繋げていったデビュー曲「bird」。聴く者の胸の中にそれぞれの風景を浮かび上がらせた「夕焼け高速道路」。初ホール・ライブのために選らんだメニューは、1stアルバム『しろくろ』収録曲を中心に、デビュー以降の彼の軌跡が見えてくる選曲になっていた。 MCでは、人懐こい笑顔と飾り気のない言葉で「朝から平静を装っていたけど、リュックの中にTVのリモコンが入っていてびっくりした」「髪を染めたら、原宿で2回スカウトされた」なんていうエピソードを披露し、客席から笑いが起こる場面も。ループステーションを使い、多重録音で披露した「hello」、真っ赤なピアニカを吹いた「明日になれば」と、多彩なアレンジがライブ中盤を彩った。 「心の中で大切な人、忘れられない人を思い浮かべながら聴いてください」と、アコギと歌だけで届けた「オレンジ」。そして「上り電車」からMCをはさんで、ライブは後半へと突き進む。「ロックスター☆」「真夜中のシンデレラ」で激しく歌い、ステージを動き回っていた彼は、なんと「スパム」で客席へ! その行動は、みんなの近くで歌いたいという衝動の表れだったのだろう。本編の最後に選んだのは、フィギュアスケートの羽生結弦選手がエキシビジョン曲として使用し、注目を集めた「花になれ」。この歌もまた、光と影を知る彼だからこそ歌える言葉が刻まれている歌だ。 アンコール1曲目は、誰にも心を開くことができず、人と距離を置くことしかできなかった中学時代に出会い、生き続けることの意味を教えてもらった山下達郎の「蒼氓」をカバー。この歌と出会わなければ、アーティスト・指田郁也はここにはいない。そんな実体験があるからこそ、彼の歌には説得力があるのだと思う。スペシャル・ゲスト、オレスカホーンズが登場し、大いに盛り上がった「music」「documentary.」のあと、たった一人で2度目のアンコールに応えた彼は、今日のライブの始まりに、みんなに届けた「嘘月」を弾き語りした。 ♫僕の声は聞こえてますか? 届いてますか?♫ 暖かな拍手に包まれたラストシーン。大きく手を振り、最後に一礼した彼の姿が、とても印象的だった。

松浦靖恵
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