“恋の手ほどき”になるユーミンの名曲

  • 邦楽
森朋之

松任谷由実/荒井由実の全シングル、全アルバムが9月24日からついにサブスクリプション解禁!ユーミン自身が選曲したベストアルバム「ユーミンからの、恋のうた。」がチャート1位を獲得。9月から来年4月にかけてコンサートのベスト版というべき演出で行われている、全国アリーナツアー「松任谷由実Time machine tour Traveling through 45years」を開催するなど、さらに精力的な活動を繰り広げています。サブスク解禁によって、ユーミンの奥深く、色彩豊かな楽曲はまちがいなく、さらに幅広いリスナーに浸透することになるでしょう。

ラブソングの名手としても知られるユーミン。そこで今回は、数多い名曲のなかから、“恋の手ほどき”にピッタリの楽曲をセレクト。恋愛の楽しさ、切なさ、痛みを味わいながら、自分自身の恋に役立ててみては?


守ってあげたい

1981年の映画『ねらわれた学園』(監督/大林宜彦 主演/薬師丸ひろ子)の主題歌として書き下ろされた楽曲。70年代までの女性目線のラブソングは、男性に守ってほしいという願いを歌うことが多かったのですが、時代の先駆者であるユーミンはこの曲で「男性を守ってあげたい」という母性にも似た感情を表現、大きな話題を集めました。たとえ10代であっても、女性には男性を守るパワーがある—— そう、「守ってあげたい」は80年代の女性に対し、自分がリードする恋愛の在り方を示したと言っても過言ではありません。温かさと美しさを併せ持ったメロディ、ひとつひとつの言葉を丁寧に伝えるようなボーカルも素敵!


ふってあげる

女性上位の恋愛がすっかり当たり前になったバブル真っ盛りの80年代後半、ユーミンはアルバム『Delight Slight Light KISS』に「ふってあげる」を収録しました。“ふられる”でも“別れを切り出す”でもなく、“ふってあげる”。上から目線にも思えるタイトルですが、よくよく歌詞を読むと、彼氏が悩んだり苦しんだりしないための気遣いであることがわかります。とは言え、恋愛に依存して彼氏にすがるのではなく、きっぱりと“ふってあげる”と言えるのはやはり魅力的。この曲がファンの間で支持され続けている理由は、主体的な生き方に憧れる女性が多いからでしょう。


リフレインが叫んでる

アルバム『Delight Slight Light KISS』には、ユーミンのキャリアのなかでも、もっとも哀しく、切ない思いをテーマにした楽曲も収録されています。「リフレインが叫んでる」は、ドラマティックなバンドサウンド、そして、「どうしてどうして僕たちは/出逢ってしまったのだろう」と強い感情を叫ぶような歌詞から始まり、失恋の痛み、愛を失うことに対する恐れと後悔をストレートに伝えます。悲しいことですが、この世の中に失恋を経験しない人はほとんど存在しません。「リフレインが叫んでる」で恋の悲しみを疑似体験することは、きっと良い予防薬になることでしょう。


シンデレラ・エクスプレス

ユーミンのラブソングは恋人たちの行動にも大きな影響を与えてきました。アルバム『DA・DI・DA』(1986年)に収められた「シンデレラ・エクスプレス」もその一つ。洗練されたAOR系のサウンドとともに“シンデレラ 今 魔法が/消えるように列車出ていくけど”というフレーズで始まるこの曲のテーマは、ずばり遠距離恋愛。最終電車に乗る“あなた”を見送る“私”の切ない気持ちを描いたこの曲は、同じ境遇のカップルたちのテーマソングとして広まりました。「シンデレラ・エクスプレス」をモチーフにしたJR東海道新幹線のCMがオンエアされると、新幹線の最終電車で別れを惜しむカップルが続出。遠距離恋愛中の恋人たちも、こんな素敵な楽曲をBGMにすれば、ウットリとしたお別れの時間を過ごせるかも。


まちぶせ

恋愛をすると、ときに不安定な心理状態になることも。恋愛ソングの名手であるユーミンは、そんな感情もしっかり歌にしています。「まちぶせ」はもともと歌手・石川ひとみに提供された楽曲。ふと喫茶店をのぞいてみたら、“あなた”が別の女の子と見つめ合っていた。その後、“あの娘”がフラれたらしいという噂を耳にするが、“わたし”は自分から告白なんてしない。偶然を装って帰り道で待ったりして、“あなた”が振り向くのを待つーーかなり危うく、複雑な恋愛感情をユーミンは見事に表現しています。それまで経験したことのない感情を運んでくるのが恋愛。「まちぶせ」で描かれた気持ちが理解できるようになれば、恋愛の本質に近づいている証拠なのかもしれません。


一緒に暮らそう

最後にハッピーなラブソングを紹介します。アルバム『NO SIDE』(1984年)に収録された「一緒に暮らそう」。華やかで上品なポップサウンド、軽やかなメロディとともに描かれるのは、一緒に暮らすことを彼氏に提案する女性。粉雪が舞う都会を背景に、おしゃれなファッションで決めた女の子が「そう きっとうまくゆくわ」と語りかけるシーンは、まるで恋愛映画のクライマックスのようです。将来のことを重く考えすぎず、もっと気軽に関係を進展させることも、恋愛のテクニックのひとつ。「一緒に暮らそう」この曲のなかの男性は「驚いた顔」をしていますが…。



純粋無垢な思いに貫かれた恋愛、自立的で対等な恋愛、そして、狂おしい感情に包まれた恋愛。ミリオンセラーとなったベストアルバム『日本の恋と、ユーミンと。』(2012年)のタイトル通り、日本の女性の恋愛はずっと彼女の音楽に彩られてきたと言っても過言ではありません。この機会にぜひ、ユーミンのエバーグリーンな恋愛ソングをじっくりと味わってみて!


森朋之

音楽ライター/’00年頃からライター活動をスタート。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。個人的に好きなジャンルは、ストーンローゼズ、オアシス、プライマルスクリームなどのUKロック。

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