台湾ポップスを楽しもう!注目アーティスト&台湾音楽の面白さが丸わかり

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KKBOX編集室

旅行にグルメ、おしゃれカフェやかわいい雑貨などでいま日本人に大人気の台湾。台湾の心地良さ、面白さ、大らかさ、情熱が凝縮したような台湾ポップスを聴いてみませんか? 今回、台湾ポップスの注目アーティストからアーティストたちの素顔、音楽シーンまでを教えてくれたのは、台湾のテレビやラジオの数々の音楽番組で長年MCを務め、台湾はもちろん日本、韓国、中華圏のポップスに精通している台湾の人気DJケン・ウー(吳建恆)氏。彼を招いて東京・虎の門にある台湾文化センターで行なわれたトークイベント「台湾ポップス&台湾における日本ポップスの今〜台湾における台湾と日本の音楽交流の現状〜」の内容をもとにお伝えしていきます。(KKBOXのプレイリストと併せてお楽しみください。)

多様化していく台湾ポップスシーンの現在

現在の台湾の音楽シーンで一番大きな変化と言えば、インターネットの普及によって音楽が多様化していることだという。ネットを通じていいアーティスト、いい曲を見つけだし、それを応援する人々が増えているのに対し、メディアはどんなアーティストがいてどの曲が素晴らしいかなどをネット上で捉えきれていなく、そのアーティストが有名になったり動画再生回数の多さがわかったりしてから初めて気付いて報じるパターンが多くなっている。

また、いま日本でも厳しいとされるCDの販売は、台湾はもっと厳しい状況で、人にCDをあげると「プレイヤーがないからCDはいらない」と断られることもあるという。ケン氏は新宿で購入したポータブルCDプレイヤーを持ち歩き、若者たちに見せびらかしているそうだが、20年前からそれほど時間が経っていないのにCDプレイヤーを見たことがない人がいるくらい、この20年で音楽の聴き方もネットの普及によって大きく変化した。たとえば、リスナーにその曲を好きな理由をたずねたときに、「ミュージックビデオ(以下、MV)が感動的だったから」と言い、音楽を聴くときはMVを一緒に見ていることが多く、単純に音だけを楽しむことが少なくなってきている。MVは大事なツールとなり、レコード会社はMV制作にものすごく力を入れているということだ。

自分の音楽番組を持っているケン氏は、過去と比べていまは情報を得るためにもっと多くの時間を費やさなければいけないという。そんな彼が今回紹介したのは、まさにそんな“いま”の台湾音楽の数々。その興味深い背景までを併せて多角的に紹介してくれた。

いま注目の台湾アーティスト・その1
草東沒有派對(No Party For Cao Dong)

いま中国からのポップスも自由に入ってこられるような音楽市場になっているという台湾。最初に台湾の人々が「草東沒有派對」の曲を聴いたときに、いままでの台湾の音楽とは全く違う歌い方、作り方をしていると感じて、彼らを北京のアーティストなのかと思ったそうだ。「草東」とは台北にある街の名前で、そこの出身である彼らは、自分たちなりの歌い方やアレンジを考え、歌詞は若者の生活に密着したものばかりで、一躍若者たちに影響を与えるバンドとなった。そんな彼らは昨年、台湾のグラミー賞にあたる金曲奨で、台湾一有名なバンド、Mayday(五月天)と並んでバンド賞にノミネートされ、見事受賞を手にした。さらにシングル賞も獲得し、すでに入手困難だった彼らのライブのチケットはますます入手困難となり、いまや中国でのライブチケットも取れないという。一方、メディアは最初、インディーズの新人バンドである彼らをとりあげることを避けがちだったが、栄えある賞を2つ獲ったことで無視できない存在になったという。

いま注目の台湾アーティスト・その2
茄子蛋(EggPlantEgg)

メンバーは20代前半。ファーストアルバムを出したばかりの今年、金曲奨で新人賞と台湾語アルバム賞のダブル受賞を果たした茄子蛋。MVが注目され、動画サイトでの再生回数を短期間で延ばし、ネットを通して音楽を広めた新世代のバンドだが、この活躍ぶりは台湾の新人アーティストの中でも特殊だそうだ。実は金曲奨のとき、メディアは茄子蛋の資料すら持っていない状況だったが、彼らはメディアの存在を全く気にしていない。なぜなら、テレビに出なくてもライブのチケットはいつもすぐに完売してしまうから。台湾語を広めたいということで台湾語に特化した曲作りをしている彼らの影響で、より多く若者たちがもっと台湾語の歌を歌っていこうという動きにもつながった。

いま注目の台湾アーティスト・その3
頑童MJ116

20年前、憧れのアーティストは誰かと聞いて「Mayday(五月天)」と答えていた当時20代の若者たちはいま40代に。では現在の20代は誰を聴いているのか? Maydayに続くバンドはあるのか? と探し続けていたところ、最近その答えがちょっと見えてきたというケン氏。いまの20代から出てくる名前が、この頑童MJ116だ。いま世界的な音楽の潮流でもあるヒップホップは台湾でも流行中。音楽をストレートに作り、おまけにルックスもいいヒップホップアーティストの頑童MJ116はいま台湾で人気だという。デビューしてから10年、今年の金曲奨でグループ賞を受賞した。グループ名は、台湾動物園と猫空のある地名、木柵の発音をMJとして、116はそこの郵便番号だという、彼らの出身地からとったものだそうだ。

これから注目のイチオシアーティスト、9m88

これから期待の9m88は、最近出てきた女性アーティストで、ケン氏もまだインタビューをしたことがないという。中国語で曲を出しているが、ニューヨーク在住の27歳。いまインディーズの多くのアーティストたちが彼女とコラボしたがっていて、Sodagreen(蘇打綠)のチンフォン(吳青峰)をはじめ、多彩なアーティストとのコラボを実現させている。そんな彼女自身がやっている音楽はソウル。まだアルバムは出していないが、もしケン氏がこれから有名になる台湾アーティストは誰かと聞かれたら、絶対彼女をオススメするという、イチオシのアーティストだ。

金曲奨の公正さを証明した
Fire.EX(滅火器)

ここまでに何度も登場した金曲奨だが、金曲奨とは先の通り、台湾のグラミー賞にあたる、台湾政府主催の音楽賞。ケン氏は審査員を10回務めていて、その審査の公正さは他に類を見ないという。近年では中国からの応募も多いそうだが、アーティストを選ぶ際には出身地もCDの売り上げも一切考慮に入れず、その曲だけを聴いて審査が進んでいき、ノミネートするだけでも難しく、受賞はさらに難関。だからこそ、金曲奨で賞を獲ったら中華圏の華人から尊敬されることになる。来年第30回を迎える金曲奨だが、3年前、第26回のシングル賞はFire.EX(滅火器)の「島嶼天光」だった。これは当時まだそこまで有名ではなかったFire.EXが、立法院で闘うひまわり学生運動の学生たちのために作った曲。政府主催による金曲奨で、政府に抗議するこの曲が受賞したことは、金曲奨の審査の公正さが証明されたようなもの。もし金曲奨の中に政治的な要素が入り込んでいたりしたらこの曲が受賞することは考えられない。審査員でさえも政治的な影響を受けずにいるということなのだ。その曲、Fire.EXの「島嶼天光」は、日本語バージョンの「この島の夜明け」もあるので、歌詞とともにぜひチェックしてほしい。

日本で人気の台湾アーティストたちの素顔
Mayday、宇宙人(CosmosPeople)、クラウド・ルー

ケン氏と同期でつきあいが長いというMaydayは現在約100公演ものワールドツアー中。8月に行なった10万人を誇る巨大スタジアム・鳥の巣での北京公演では、Maydayと同じ事務所の後輩にあたる宇宙人(CosmosPeople)と、事務所の違う無名のバンドがオープニングアクトを務めた。後輩を育てようと、後輩の音楽を人々に聴かせる機会を設けて、後輩に自分たちと同じ環境を体験させてあげたりするMaydayのその素晴らしい気持ちをケン氏は絶賛。また、Maydayがこの北京公演で最後に歌った曲が台湾語の歌であったことも紹介された。

そして、その宇宙人の素顔はというと、メンバー全員が進学校出身のエリートで性格がいいという。彼らもMaydayと同じく高校時代からバンド活動を開始している。宇宙人とも親しいケン氏は今年の夏、宇宙人が台湾代表として出演したフランスの音楽フェスにも同行したそうだ。宇宙人は9月に東京・大阪で行なった来日ライブも大成功。来年には初となる台北アリーナ公演を行なう予定だ。

クラウド・ルー(盧廣仲)は今年の金曲奨でシングル賞と作曲賞を受賞。また、台湾のエミー賞にあたる金鐘奨では主演ドラマ『お花畑から来た少年』が11部門にノミネートされたことも大きな話題に。ドラマに出てからさらにとんでもなく有名になったというクラウドだが、夜型人間が多いこの業界では珍しく早起きが得意。多忙だったクラウドから久しぶりに朝ご飯に誘われたケン氏は、彼を気遣って「席だけ予約しとこうか?」と言うと「よく知ってる店だから大丈夫」と。翌朝、店に向かう車の中で「もう着いたよ!」とクラウドから連絡が入った。着いたらお店はまだ営業時間前で、開店を待つ人々の行列ができていた。有名なあのクラウド・ルーがまさか並んでるわけがないよね?と思って見ると、列の真ん中あたりにクラウドが!帽子もマスクもしないでいつもの姿のまま「ハーイ!」と手を振っていたそうだ。「昨日は店と知り合いって言ってたのになぜ並んでるの?」と聞くと「まさかこんな人気店だとは知らなかったから、みんなと一緒に並ばなきゃと思って!」と照れ笑い。そんなクラウドは、11月にBLITZ赤坂とビルボードライブ東京での来日公演と、来年4月に3度目となる台北アリーナ公演が控えている。

現在の台湾アイドル事情とは?
イケメン実力派シンガー、Bii(畢書盡)が人気!

かつて2000年代には中華圏の中でもアイドルの宝庫と言われていた台湾だが、イベントでは現在の台湾アイドル事情についても触れられた。

いま台湾でアイドルといえばK-POPグループが人気で、若さとクオリティの高さを備えたK-POPにどうしても目が向いてしまうため、台湾のアイドルグループは男女ともになかなか難しい状況だという。その背景には、アイドルになるためには早いうちからレッスンを重ねるものだが、進学が大変な台湾では、多くの親が子供をアイドル養成所などに入るのを嫌がるという一因もある。大学に入ってからやっと自分たちのやりたい音楽を始めるというのがいまの台湾のスタイルで、アイドルになりたい人は韓国へ渡り、韓国の養成所で学ぶそうだ。

そんな中、いま台湾で人気のあるアイドル的存在なのが、Bii(畢書盡)。実はデビューして10年、作詞作曲も手がける彼は、台湾人の父と韓国人の母を持ち、韓国で生まれ育った。18歳のときに台湾で活動すると決心し、韓国籍を放棄して台湾に来た。台湾籍をとったということは台湾の兵役があり、彼も当時の期間の約2年兵役に就いた後に音楽活動を始めた。ケン氏はさらにインタビュー時にも、Biiについて語ってくれた。「Biiは最初から台湾だけにとどまらない、アジアを視野に入れた感じがしていました。デビュー当時からメイド・イン・台湾とは思えない雰囲気があり、歌詞は英語、韓国語、中国語の3つの言語が入っている。彼が台湾で人気を得た理由は、作詞作曲において自分の人生や孤独感などを重視して書いていることや、歌もうまいところだと思います」。

祖先から伝わる魂の歌、台湾原住民音楽とは?

多くの部族がありそれぞれに違う母語を持つ台湾原住民の音楽とは、感情や魂が音楽で表され祖先から伝わる歌の力があり、心に直接響く音楽だという。ケン氏は以前に原住民アーティストのサンプーイ(桑布伊)とMATZKAと一緒にアメリカに行き、現地の歩行者天国でのイベントに参加したという。彼らが歌い出すとアメリカ人がみるみる集まってきて、全員一緒に歌って踊ったそうだ。正直、これがもし北京語や台湾語の曲だったらそうはできないことだと思う、とケン氏は最後に付け加えた。

ケン・ウー(吳建恆)氏インタビュー

——今日はイベントで台湾の音楽についてたくさん教えていただきましたが、ケンさんご自身が思う台湾ポップスの良さや好きな部分はどんなところですか?

台湾はそれこそ小さな島ですが、その小さい中に様々な民族がいるところや、アーティストたちがそれぞれの母語を使って曲作りができるのも素晴らしいところだと思います。もし自分の番組が1時間あったとしたら、アーティストを紹介するのにも3つ4つの言語が混ざり合ったような音楽をお届けできる。いろんな言語で歌われる曲にそれぞれの文化や音楽が合わさっていき、また違うスタイル、個性が出てくるところが台湾ポップスの良さだと思います。とくに台湾原住民音楽は創作の過程から全然違って、心の内側からの魂でメロディが作られて、リズムや音符にとらわれない音楽です。僕個人としては、商売のために作られた曲ではなくて、その人の人生に関わるストーリーを書き出している音楽や、人として感動を受ける音楽が好きですね。K-POPはどちらかと言うと商業化されていて、流行のために作られた音楽があふれているけれど、心に訴えかけるものや人生との結びつき方、人と人との結びつき方という点では、やはりC-POPの方がより豊かですね。そこがC-POPの貴重なところだと思います。

——ケンさんは海外で台湾ポップスを紹介する機会も多いと思いますが、海外に出たときに、台湾の音楽がどう受け止められていると感じますか?

感覚的に思ったのは、台湾の音楽は歌詞で感動させることが多いので、海外に行くと歌詞を理解できないという問題があります。たとえば、台湾の多くの人はMayday が好きですが、彼らの歌詞を十分に理解できないと、聴いたときにああいいなぁと思っていても、感動の部分で差が出てきちゃう。逆に海外に行くと、原住民音楽の方が浸透しやすいと感じます。元々歌詞にとらわれない音楽で人々に伝えていく、というのが強い音楽だから。ドイツのエニグマというアーティストが、台湾原住民音楽のメロディを自分の曲に取り入れました。台湾原住民からしてみれば、その歌詞にも意味があって歌われたものかもしれませんが、メロディだけでも感動することができる。それをエニグマが歌ったことによって、みんなに台湾原住民音楽を知ってもらうことができました。

——日本人が台湾に行ったときに、台湾の音楽に触れたり楽しむための過ごし方や行くべきスポットなど、ケンさんのオススメを教えてください。

台湾って実はすごく特徴的なのが、テレビ・ラジオの局数がとても多くて、テレビだけでも100数チャンネルあります。凝縮したいろんな台湾を見ることができるので、まず1つめは、ホテルでずっとテレビのいろんなチャンネルを見てもらうというのがオススメ。適当に回して見たいものを見てもらうといいと思いますが、中国語の音楽だったらやっぱりMTVチャンネルですね。スポットでは、もし流行の音楽を知りたいなら、華山1914がオススメです。ここは音楽と関わりのあるいろんな展示をしていて、毎晩ライブが行なわれているLegacyというライブハウスもあるので、歩いて見てみるといいと思います。それから、本来なら大型CD店に行っていろいろ聴いてもらうのがオススメではあるんですけど、いま台湾はマーケット自体が縮小していてタワーレコードもHMVもないので、誠品書店に行くとインディーズも含めていろんな音楽を知っていただけると思います。

(文・小俣悦子)

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