あいみょん、宇多田ヒカル、aiko、奥華子、村下孝蔵が描く〈初恋〉の世界を聴く。
初めて好きになった人と両想いになれた人も、そうでなかった人にとっても〈初恋〉は大切な記憶です。そして〈初恋〉をテーマとした音楽作品もたくさん生まれ、多くのアーティストたちに歌われてきました。今回はそんな〈初恋〉を描いた名曲を聴きながら、忘れかけていた皆さんの甘酸っぱい初恋の記憶を辿っていきたいと思います。
初恋が泣いている / あいみょん(2022)
出典元:YouTube(あいみょん)
最新の初恋ソングとして紹介したいのが、あいみょんの「初恋が泣いている」。広瀬アリス主演ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』の主題歌となっている「初恋が泣いている」は、先行配信されて以降は常にストリーミングチャートの上位にランクインしています。さて、あいみょんがイメージした〈初恋〉は、どのようなものなのでしょう。
時間が経って忘れているつもりでも、時折想い出してしまうのが大好きだった初恋の人。この曲の中でも、初めての恋をずっと引きずってる女性が主人公です。ただ、さすがにあいみょん。予想もできない日常の中に〈初恋〉の記憶を潜ませています。
電柱にぶら下がったままの初恋は
痺れをきかして睨んでる
電信柱に見えたのは初恋の人だったのか、それとも想い出そのものだったのかわかりません。予期せぬ時にじわっと現れてくる初恋の記憶をあいみょんらしく表現しています。早く素敵な恋を見つけて、〈初恋〉に睨まれる感覚がなくなるといいですね。
初恋 / 宇多田ヒカル(2018)
出典元:YouTube(Hikaru Utada)
イントロもなしに宇多田ヒカルの歌声から始まる「初恋」。しかも核心となる歌詞をシンプルな鍵盤の音だけをバックに歌われるインパクトは大きく、この曲の世界に一気に引き込まれてしまいます。そして曲のラストまで、聴く側の胸の鼓動は高まり続けることになるのではないでしょうか。宇多田ヒカルの描く〈初恋〉は懐かしい記憶というレベルではなく、狂おしいほどに「好き」という感情を客観視しているようでもあります。
うるさいほどに高鳴る胸が
柄にもなく竦む足が今
静かに頬を伝う涙が
私に知らせる これが初恋と
また宇多田ヒカルはかつて「初恋」について、次のように語っています。
恋の始まりとも終わりともとれるように書いています。初恋というのはそれを自覚した瞬間から、それ以前の自分の終わりでもあるので。
まるでツルゲーネフの「初恋」を想起させるような歌詞と、宇多田ヒカルの〈初恋〉の捉え方。自分が恋をした十代の頃にはまったく自覚すらできなかった感情です。しかし大人になったいま、宇多田ヒカルの「初恋」で歌われるひとつひとつの繊細な歌詞に共鳴し涙してしまうのは、自分が成長した証なのでしょう。あの頃、言葉にできなかった〈初恋〉への感情を、この曲で私たちはようやく理解できたのかもしれません。
また、宇多田ヒカルが15歳の時に発表した「First Love」と聴き比べてみると、彼女自身の変化も感じることができるので是非。
初恋 / aiko(2001)
出典元:YouTube(aikoOfficial)
まだこれが「恋」だと自覚しきれていない気持ちから、次第にその想いが高まっていく様子をシンプルな言葉で歌う aikoの「初恋」。等身大で描かれる女の子も気持ちに、多くの人が「わかる! わかる!」と同意してしまうのではないでしょうか。
胸をつく想いは絶えず絶えず絶えず
あたしはこれからもきっとあなたに焦がれる
それはささいな出来事 指が触れた時
わざと「あなた」の指に触れてみるという小さな覚悟は、なんとも初々しい行動です。まだ恋の感情を上手く表現はできないけど、彼のことが大好きだという気持ちが痛いほどに伝わってきます。ただこの曲で恋の結果は描かれません。このあと、この恋心はどうなるのでしょう。〈初恋〉特有の甘酸っぱい恋のシチュエーションを思い出すには最適です。
初恋 / 奥華子(2010)
出典元:YouTube(ponycanyon)
奥華子の「初恋」は恋の終わりを歌った究極の失恋ソングです。初恋が終わってしまった切なさ、次の恋に進むことには時間がかかってしまいそうな複雑な心境を歌っています。それはまるで、大人が本気で人を好きになった恋の終わりを描いているかのようです。この曲の〈初恋〉は初めての本気だった恋愛を指しているのかもしれません。
名前で呼んだりしないから 隣り歩いたりしないから
用事もないのに電話したりしないから
だからもうサヨナラなんて言わないで お願い
2人の幸せだった時をひとつひとつ振り返ったり、好きな人の側に少しでもいたいという気持に胸が痛くなります。恋の終焉を迎え心を掻き乱される主人公のことが本当に心配になってしまいますが、奥華子のピュアで真っすぐな歌声で前向きな気持になれるのが救いです。
初恋 / 村下孝蔵(1983)
世代を超えた不朽の初恋ソングとして歌い継がれているのが村下孝蔵の「初恋」です。1983年に発表されてから40年、吉岡聖恵、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、玉置浩二、吉幾三、香西かおり、Acid Black Cherry、May J.など、ジャンルも年代も多岐に渡るたくさんのアーティストたちにカバーされてきました。なぜこの曲は多くの人たちが口ずさみたくなる、そして私たちの胸に残るのでしょうか。
好きだよと言えずに 初恋は
ふりこ細工の心
放課後の校庭を 走る君がいた
遠くで僕はいつでも君を探してた
浅い夢 だから 胸をはなれない
それは「初恋」で描かれる歌詞が、誰の中にもある恋の原風景があるからではないでしょうか。例えば「ふりこ細工」という言葉。「好きだと言いたいけど言えない」とか、「話しかけたら、嫌われるんじゃないだろうか」などの、初々しくも揺れる心の動きを端的に表現しています。
また、放課後の校庭を走っているのは、部活動中なのかもしれないし、家路を急ぐ姿かもしれません。その姿を見ている場所は、教室からかもしれないし、部活動をしている校庭かもしれません。村下孝蔵の「初恋」には、いろんな人の記憶に繋がることができる余白があることで、いろんな人の〈初恋〉に寄り添えることができるのでしょう。
いかがでしたか?アーティストによっては〈初恋〉の描き方も様々です。プレイリストではさらにたくさんの〈初恋〉の歌を選曲しているので、こちらも是非聴いてみてください。