桜の開花はYUKI、満開の頃には米津玄師、散りゆく時はヨルシカ〜桜ソングはシチュエーションごとに選ぼう〜

桜の開花はYUKI、満開の頃には米津玄師、散りゆく時はヨルシカ〜桜ソングはシチュエーションごとに選ぼう〜
山本雅美
山本雅美

桜の季節がやってきました。今年はコロナ禍で抑えられていた規制も少なくなり、久しぶりにのびのびとお花見が楽しめそうです。そして桜の開花は例年になく早く、すでに開花し始めたというニュースもあります。そこで今回は桜の開花から咲き誇る満開の桜、そして桜の花びらがひらひらと散っていくまで、桜の花の移ろいごとにオススメな桜ソングをピックアップします。ヒットソングから隠れた名曲まで、他ではなかなか知ることのできない桜ソングです。

桜が咲き始める頃に欠かせない桜開花ソング


♫ 春 / 折坂悠太

出典元:YouTube(折坂悠太)

この楽曲の歌詞に〈桜〉というフレーズはでてきませんが、なんとも緩やかなメロディとわずか90文字の短い歌詞には、春の訪れの独特の感じが詰まっています。梅の花が咲き、菜の花が咲き、白木蓮が咲き、そして桜の蕾も少しづつ膨らみが大きくなり、ピンクに色付き始めたことに気が付く。外の様子を丁寧に見つめると、刻々と季節が変わっていくことを実感します。今年の春はこの楽曲を聴きながら、桜の花の開花を迎えてみるのも良いかもしれません。


♫ どんどん君を好きなる / YUKI

YUKIのソロデビュー20周年を飾るアルバム『パレードが続くなら』に収録されている「どんどん君を好きになる」。〈梅は咲いたか 桜はまだか〉というフレーズが表すように季節は3月。うららかに揺れる桜の花びらに、溢れ出す大好きな人への気持ちを重ねたポジティブで明るい楽曲になっています。シンプルながら春の日差しのようにキラキラしたメロディも相まって、聴く人に多幸感を与えてくれることでしょう。「どんどん君を好きになる」は、春先の蕾のように恋が生まれていく歌です。気持ちが晴れやかになること間違いありません。


♫ ソメイヨシノ / 平原綾香

花が散り、夏を越し、秋の終わりには葉を落とし枯木のようになっても、また春になったら美しい花を咲かす桜。そんな桜の姿に、辛いことや大変なことがありながらも生きる日々を重ね合わせているのが、平原綾香の「ソメイヨシノ」です。桜の木を人間のような存在で見つめ、そして桜の木から鼓舞される主人公。確かに他の木々や花と違い、桜は私たちに何かを語りかけているような気持ちになることがありませんか。葉桜になって、やがてその葉が枯れても、桜であることに変わりはありません。この曲を通して平原綾香は「また来年もいっぱい咲いてね」と話しかけてあげることも大事だと感じたそうです。


桜満開の空の下でエモくなれる桜ソング

春雷とは冬から春へと移ろう時期の、自然界に現れる兆しや季節の変化です。春の訪れとともに蘇る人間の心の営みを描いている「春雷」は、人々の心にも変化をもたらすことを歌い上げています。特に歌詞の〈やがてまた巡り来る春の最中 そこは豊かな陽だまりでした〉というフレーズは、新しい季節に向けての希望や願いを表現しています。春は自然界が目覚める季節であり、新しい生命が芽吹く時期。このような季節の変化の中で、自分自身と向き合うことを促され、新しいことに挑戦する勇気や、未来への希望を抱かせる楽曲に感じます。そのような心の変化を表現した歌詞が、「春雷」の曲の魅力を一層引き立てていると言えます。


♫ 春雷 / 米津玄師

出典元:YouTube(Kenshi Yonezu 米津玄師)

また米津玄師は低音から高音までの広い音域を駆使し、情感豊かな歌声で聴く人の心を揺さぶります。また曲の中で使用される楽器の音色も印象的で、アコースティックなサウンドが春の季節の優しい雰囲気を表現しています。満開な桜の下で「春雷」を聴きながら、気持ちを新たにしてみましょう。


♫ 桜色舞うころ / 中島美嘉

出典元:YouTube(中島美嘉 Official YouTube Channel)

桜ソングとして常に上位にランキングされる中島美嘉の「桜色舞うころ」は、プロローグとなる春から始まり、美しい四季の情景に合わせて移ろいゆく恋人達の心情を歌っている楽曲です。「桜」ではなく、あえて「桜色」という表現が、なんともエモさを感じます。

桜色が舞う時期に主人公の女性は恋に落ちます。そして若葉色が映える夏には、その人しか見えなくなるほどの熱い想いになっていきます。そして枯葉色に染まる秋、その想いは実り確かな愛へと変わるのです。そして冬。〈想いはぐれて 足跡も消していく〉という歌詞から窺えるように、恋の終わりは雪化粧をまとい始めた冬にやってきます。再びやってくる桜色の季節は、大好きな人への想いを噛み締めながら、彼女はひとり桜の花を眺めているという恋物語が「桜色舞うころ」なのです。この楽曲の凄いところが、歌詞の始まりと終わりに登場する〈桜色舞うころ 私はひとり〉という一節。同じひとりでありながら、女性の感情がまったく違うものであることを見事に対比しています。それに加えて、柔らかなピアノとハープの音が、1年間の感情の起伏を歌う中島美嘉の艶やかに響く歌声に彩りを与えています。

恋をしていてもしていなくとも、桜の花を見るとふといつか見た桜の記憶を辿ってしまう人も多いのではないのでしょうか。今年の桜で、懐かしい記憶を思い巡らしてください。


♫ めぐろ川 / miwa

都内でも有数の桜の名所である目黒川。大橋から下目黒にかけて、約4kmにわたって川沿いに桜並木が広がり大勢の花見客で賑わいます。miwaの「めぐろ川」は、そんな東京の目黒川を舞台に、春の季節に咲く桜の美しさと、ささやかなラブストーリーを歌っています。

〈舞い散る花に隠れるようにキスしたね〉という淡い想い出を辿りながら、今年はひとりで目黒川にやってきた彼女。離れ離れになってしまった人への想いを募らせ、いつかは2人の夢が桜の花のように咲くようにと歌っています。

中島美嘉の「桜色舞うころ」とは違い、この物語の主人公の恋は続いてるので、この恋を応援したくなります。そんな聴き比べをしながら聴いてみると、それぞれの楽曲の深さに触れることができるかもしれません。


♫ さくらのうた | 桜の詩 | サクラノウタ / KANA-BOON

ロックバンドで桜への想いを一番持っているのはKANA-BOONです。男性目線のピュアな感情を描いた「さくらのうた」を2013年に発表し、そのアンサーソングとして女性目線の複雑な感情を描いた「桜の詩」を2014年にリリースしています。「さくらのうた」は、ボーカルの谷口鮪(Vo. / Gt.)が大好きだった人と歩いた桜道の思い出が忘れられなくて制作した楽曲で、本人いわく「歌になったんですけど、すごく不甲斐ない、切なさ全開みたいな」と語っています。

出典元:YouTube(Sony Music (Japan))

それに足して「桜の詩」は、大好きだった女の子が「こんな気持ちだったらいいのにな」という、女性目線の歌詞を書いた内容になっています。桜を見ながら国道沿いを歩いている時に、自分のことを想い出してくれたらいいなという気持ちを書いた楽曲。恋は実らなかったけれど、桜の季節を大切にしていることがよくわかるエピソードです。

出典元:YouTube(Sony Music (Japan))

そしてメジャーデビュー10周年となる今年、3作目となる「サクラノウタ」を発表。過去の2曲の舞台となっている「国道沿い」というワードも交え、大人になったいま、キラキラした10代を振り返る疾走感のあるロックサウンドになっています。時間を超えて歌われるKANA-BOONの桜ソング。この3曲を聴けば、谷口鮪のエモい桜の記憶を共有できるのではないでしょうか。

桜の夜の満開の下で聴くべきこの3曲


♫ 桜が降る夜は / あいみょん

出典元:YouTube(あいみょん)

〈4月の夜はまだ少し寒いね〉と好きな人に語りかける歌詞で始まる「桜が降る夜は」。満開の桜まで、あともう少しという夜にぴったりの曲です。あいみょんの歌詞で描かれる男女間の絶妙な空気感や、大人の恋愛における独特な視点での表現にはいつもドキリとさせられます。「桜が降る夜は」ではこれまでの歌とは少し違い、まだ好きという気持ちを伝えられない主人公の〈桜が降る夜は 貴方に会いたい、と思います〉という健気な想いが歌われています。ただ、そこからは一気に恋する熱い想いを吐露していくのです。「桜が降る夜は」は、春真っ盛りのいま、恋をしている人に是非聴いて欲しい楽曲です。ちなみに2021年に発表された「桜が降る夜は」は、あいみょんが22歳の時に作った曲。現在形のあいみょんと聴き比べてみるのも発見があるかもしれません。


♫ 散る散る満ちる / 伶

E-girls、Flowerを経て2021年にソロプロジェクトを始動させ、表現力豊かなシンガーとして活躍する伶(鷲尾伶菜)。そんな伶が、春の夜をモチーフに歌ったのが「散る散る満ちる」です。叶わぬ恋への想いを募らせる失恋ソングですが、桜と満月という絶妙な春の夜のコラボレーションを舞台にして、情緒的なメロディと相まって、春の夜の絶妙な空気感を感じることができる楽曲となっています。歌詞も文学的余白が存在し、坂口安吾の『桜の森の満開の下』を彷彿とさせるエッセンスを感じることができます。さて、2023年4月の満月は4月6日です。この時期に桜が咲いているかは微妙ですが、満月の下で「散る散る満ちる」を聴くことができたら、感傷的な気分に浸れることを保証します。

ちなみに4月の満月はPink Moon(桃色月)と呼ばれています。実際に月がピンク色になる訳ではありませんが、春になって開花する花の色から名付けられたと言われています。そしてこの夜の満月を見た人は、「幸せをもたらしてくれる」というロマンチックな噂があるようです。


♫ 桜夜風 / スキマスイッチ

「桜夜風」はスキマスイッチのファーストアルバム『夏雲ノイズ』に収録された楽曲です。〈吹き抜ける桜夜風〉という象徴的な歌詞と、シンプルなピアノのメロディには、春の夜桜がぴったりではないでしょうか。「桜夜風」は山崎まさよしがパーカッションとアコースティックギターで参加していますが、レコーディング中、スキマスイッチの2人がパソコンでアレンジしているの姿を見て「現場の音を大事にした方が良い」とアドバイスしたそうです。そうしたこともあって「桜夜風」に、壺を叩く音や箒を掃く音を取り入れることとなったそうです。その影響か「桜夜風」はごく日常の中で感じる桜への想いを感じることができます。家に帰る途中でふと夜の桜を見かけたら「桜夜風」を聴いてみませんか。


桜の季節の終わりは感傷的なこの曲に浸る


♫ 桜流し/宇多田ヒカル

「桜流し」は多くの人々から愛されている2012年にリリースされた宇多田ヒカルの名曲のひとつです。繊細かつ力強い宇多田ヒカルの歌声はもちろん、桜の花びらが散り落ちる様子を描いた歌詞は、季節の移り変わりや別れを感じさせ、多くの人々の共感を呼びます。また、ピアノ、ストリングスの豊かな音色が交錯するアレンジは、曲の雰囲気を一層深めています。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の主題歌としてリリースされた2012年11月は、前年に起きた東日本大震災の傷がまったく癒えていなかった時期です。宇多田ヒカル自身は明言していませんが、東日本大震災が発生した翌年にリリースされた「桜流し」に対して、多くの人々がこの曲を東日本大震災を想って書かれたものだと受け止めていました。そうやって聴くと「桜流し」が大切な人を失ったすべての人への鎮魂歌のように聴こえてきます。そして、この楽曲で繰り返される〈Everybody finds love In the end〉という歌詞が、優しく寄り添うメッセージが込められているかのようで、胸に刺さるのです。

散っていく桜が水に流れ行くのを見て、皆さんは何を感じるのでしょう。


♫ 春泥棒 / ヨルシカ

「春泥棒」が配信リリースされたのは2年前の2021年1月ですが、TBSドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』で主人公の空豆と音が出会う場面のほか、ドラマの中で大きくフューチャーされ、各ストリーミングチャートでじわじわ上昇中です。ドラマの脚本を担当した北川悦吏子さんがこの楽曲にこれほどまでこだわったのかも納得できるほど、桜の季節の終わりをここまでエモーショナルに表現した楽曲はこれまで無かったのではないでしょうか。

出典元:YouTube(ヨルシカ / n-buna Official)

〈春の匂いはもう止む 今年も夏が来るのか〉〈花の隙間に空 散れり〉〈春がもう終わる 名残るように時間が散っていく〉などの、春が終わりの空気感を情緒的かつ、豊かな表現で表しています。またピアノやギター、ドラムなど楽器の音色が、桜が舞い散る光景を繊細に表現し、胸に沁みてきます。

そしてラストの歌詞が圧巻。桜咲く季節が終わっていく光景が浮かび上がり、まるでそこに自分がいるかのように感じられるのです。

散るなまだ、春吹雪

あともう少しだけ

あと花二つだけ

もう花ひとつだけ


ただ葉が残るだけ、はらり

今、 春仕舞い

「春泥棒」は桜の季節が終わるセンチメンタルな感情を絵画のように表現した秀逸な楽曲ですが、ドラマのように、やがてやってくる大切な人との別れを桜に重ね合わせていたのかもしれません。桜の花の盛りが越え、花びら舞う空の下で是非聴いてみてください。

いかがでしたか。桜をテーマにアーティストたちはたくさんの楽曲を残しています。ただ桜に対する感情のモチーフはさまざまです。桜の季節は短いですが、その時々で違った桜ソングに浸るのも、粋な音楽の聴き方になるはずです。


オススメプレイリスト


山本雅美
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